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氷の薔薇がとけるまで 遺言で知った婚約者に、政略結婚を望んでいたはずの女王陛下は恋に落ちる  作者: 乙原 ゆん


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35.リサの決断

 スカーレットは準備が出来るとすぐに調合に取りかかった。

 調合は二日に渡った。可能な限り急ぐべきだと休憩も切り詰めて調合してくれたようだ。

 二日後。調合が終わったと部屋に呼ばれ、ぐったりした様子のスカーレットに赤く透き通った色の薬を渡される。


「陛下。こちらが、調合した薬になります」

「スカーレット殿下、感謝致します。どのような結果になろうと、殿下の献身に必ず報いたいと思います」

「報酬を望んでのことではありません。私ができることをしたいと願ったことです」

「ありがとう」

「早くリサ様にその薬を飲ませて差し上げてください。私は、しばし休息をいただきます」

「ええ。ゆっくり休まれてください」


 私は念のため王宮の医師を手配し、薬を手にリサの休んでいる部屋に向かった。



 リサの状態では馬車での移動が厳しいと王宮に留めている。

 ローランドはそんなリサから片時も離れず看病にあたっていた。

 取次に入室を伝えてもらう。


「陛下……」


 出てきたローランドに案内され、リサのもとへと向かう。

 医師は控え室にて待つよう指示している。


「リサの調子はどう?」


 ローランドはゆっくりと首を振った。

 寝室に向かうと、リサは寝台に横たわっていたが目は覚ましていた。


「リサ、そのままでいいわ」


 体を起こそうとするリサに言い、側の椅子に腰掛ける。

 気を使って出ていこうとするローランドにもとどまるように言い、話をする。


「二人に、お話があるの」


 リサも、ローランドも何の話をしようとしているのか見当がつかないといった様子だ。


「リサの薬ができたかもしれないの。ただ、重大な副作用があって、この薬が正しく出来上がっているか確かめようがないの。効果があるかは、飲んでみないとわからない」

「重大な副作用とは、何でしょうか」


 ローランドが問う。


「もしこの薬でリサの症状が改善しても、魔術が使えなくなる可能性があるわ」

「魔術が……」


 ローランドは、魔術が使えなくなると聞いて、顔色を悪くした。助かっても、魔力が使えないならばこの国では生きづらいだろう。


「この薬は魔力を作る力を極端に弱めるそうよ」

「魔力を……」

「どの程度抑えられるかは、飲んだ人の体質に依存する。この薬は魔力過多症の人のために作られたけれど、実際に魔力過多症の人に効くかどうかは、飲むのはリサが一例目になるの」

「それは、薬と言えるのですか……」


 ローランドの言葉に苦笑する。確かにその通りだ。


「その通りね。でも、今までは薬すらなかった。不確定な部分が多いけれど、それでも、私はこの薬をリサが飲んでくれたらと思っているわ。でも、飲むかどうかは、リサとローランド、二人の意見を優先する」


 ローランドが、首を振る。


「私は――――リサが、助かるのなら……だが……リサは、どうだい?」


 ローランドは言葉を絞り出した。リサは落ち着いている。


「薬を飲みます」

「リサ……? 魔術が使えなくなるかもしれないんだよ」

「でも、お兄様を残して行けないわ」


 リサが儚く微笑む。


「魔術がなくても、生きていけるわ」

「何があっても、リサを守る」

「もう十分守ってもらったわ。陛下、薬をください」


 リサはローランドを落ち着けると、薬をねだった。


「これよ」

「お兄様、この薬は私の意思で飲みます。どうなっても、陛下を責めたりなさらないでね」

「ああ、わかっている」


 リサは薬を光に透かしてきれいと呟いた後、一息に飲み干した。


「うっ――――」


 リサが、胸を抑える。

 一瞬の後、リサの体から光が溢れた。

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