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氷の薔薇がとけるまで 遺言で知った婚約者に、政略結婚を望んでいたはずの女王陛下は恋に落ちる  作者: 乙原 ゆん


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27.ボードリエ侯爵の不調

 町に出かけてから、ステファンとは距離が縮まった気がするが、それ以外は普段通りの日々を送っていた。

 そろそろ婚約披露のパーティの準備に本腰を入れないといけないだろうか。

 シンギングバードのばねを巻き、しばしの間小鳥がさえずるのを眺めた後、部屋に控える侍従に声をかけた。


「ボードリエ侯爵を呼んできてもらえるかしら」


 予算は婚約がわかった時点で修正しているので、参加者と日程の最終確認をしておきたい。

 侍従が侯爵を呼びに行く間に、参加者のリストを準備しておく。

 リストを眺めていると、侍従が困惑した様子で帰ってきた。


「陛下。恐れながらボードリエ侯爵は本日、体調不良によりお休みなさっているそうです」

「そうだったの」


 ボードリエ侯爵もそこそこの年齢だ。この国では高齢といって差し支えない。今までもこうした休みは何度かあった。

 引き出しからメッセージカードを取り出し、メッセージを書きつける。


「悪いけれど、侯爵にこのカードと花を贈るよう手配してもらっていいかしら」

「かしこまりました」


 侍従がうやうやしくカードを受け取ると、部屋を出ていった。

 用意したリストを再び引き出しにしまうと、気分を切り替え他の書類の確認を行う。

 パーティについては本日は一旦保留として、ボードリエ侯爵の復帰を待ってから進めればいいだろう。



 見舞いを贈った後、翌々日には侯爵は復帰した。

 朝一の執務室で、侯爵から訪問を受けている。


「陛下。お見舞いの花とメッセージをありがとうございました。お陰様で元気になりましたので、本日より復帰致します」

「体調は大丈夫なのですか?」

「はい。ご心配をおかけしました。風邪だといわれ、陛下に移すようなことがあってはいけないと、出仕を差し控えました」

「かまわないわ。侯爵が元気になったのならいいのです」

「もったいないお言葉です」


 侯爵はまだ少し顔色が悪いが、鷹のように鋭い眼光には変わりがなかった。


「ところで陛下、休暇中に私をお呼びだったと伺いましたが」

「そうでした。婚約披露のパーティの件で、侯爵に確認をお願いしたいと思っていたのです」


 引き出しから候補日と参加者リストを取り出し、侯爵に渡した。


「なるほど。おおまかにはよろしいのではないでしょうか」

「というのは?」

「スカーレット殿下はまだしも、オルテンシア国からの技師らまで呼ぶ必要はありますか?」

「彼らもオルテンシア国内ではそれなりの地位についていると聞いています。何か問題がありますか」


 侯爵は私を鋭い視線で見つめた。


「この国の貴族が彼らと縁を繋いでも無意味でしょう」

「そのことなのですが――」


 話をしようとしたところで、扉がノックされた。


「陛下。お話し中のところ申し訳ありません。スカーレット殿下が本日帰還されるとの知らせが先程到着しました」


 予定では明日と聞いていたが、記憶違いだろうか。

 考えても仕方がないため、指示を出す。


「わかりました。すぐに出迎えの準備を整えるように」

「はっ!」


 侍従が出て行った後、侯爵に視線を戻す。


「話の途中でしたが、要は侯爵はプラハシュ殿らの招待には反対ということですね」

「反対という程ではありません。それが陛下のお望みでしたら、私も従います」

「私の希望よ」

「かしこまりました。では、そのように取り計らいましょう」


 侯爵は、リストを持ち部屋を退室した。

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