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第一星 デネボラにおいて

恒星デネボラ。それがいま私のいる星の名前。


「デネボラ…地球ではしし座β星…とも言ったっけね。ラン。」


「えぇ、主スティラ。…滞在8日目ですが、覚えてなかったのですか?」


私をサポートしてくれるロボット、ランが答える。ランは5年前、地球を出た時からの相棒。私が結構忘れっぽいから、いろいろなことをしてくれてる。


「ただの確認。気にしないで。…それより、デネボラでやらないといけないことってあと何があったっけ?」


「あと残っているのは最下級星侵獣“アズマント”の駆除ですね。」


「アズマントか~…数、多いんだよね。まぁ、地上型なだけいいか。」


最下級星侵獣“アズマント”。“星侵獣”というのはその名の通り星を危険に晒すもの。魔物、って言った方が分かりやすいか。その中の“アズマント”というのはゲームとかでのスライムとかと同位置の存在。正式名称“最下級地上小型可増殖式星界侵略魔獣アズマント”。


「星外型の場合、恒星の光が辛いですものね。」


「そうなんだよね…」


恒星───自ら光を放つ星、と地球では言われている。正確には、発光するガスを纏う星のことを指す。その内部に地表があるかどうかは星によるけれど、このデネボラは地表があるタイプ。オゾン層のように発光ガスが星を覆っていると考えればわかりやすい。


「…っと、あそこか。」


ランと話している間にそのアズマントが密集している場所に辿り着く。…やっぱり、数が多い。大体…700くらいか。


「早く終わらせて次の星に向かおう…」


「はい、主スティラ。」


私は刀。ランは機関銃。基本的に使う獲物はそれ。昔、日本に行った時に刀に惚れて…それ以来、ずっと使い続けている。


「エネルギー…50%もあれば十分か。」


「油断は禁物ですよ、主?」


「分かってる…でも予定なら今夜にはここを発つ予定でしょ。そこまで無駄遣いはしてられない。」


「…それもそうですね。」


ランがため息をついたところでふと思い出したことを口にする。


「アレってあといくつあったっけ?」


「あと5個かと。」


「…近々太陽系に戻らないとかな」


そう呟きながら量子変換ポーチから手榴弾型の物を取り出す。


「ラン、耳栓!」


「はいっ」


ランに耳をふさぐように指示してからピンを抜き、アズマントの集団に向かってオーバースロー。



ギィッ!!



不快な音が響き渡り、アズマントが怯む。それを見て私はランの援護射撃とともにアズマントに襲い掛かった。


「エネルギーブレイド───応えよ、星の神秘たる光。怒り具現す焔よ、刃となりて───」

「エネルギーバレット───応えよ、星の神秘たる光。怒り具現す焔よ、弾となりて───」


詠唱。何年前だったか───この世界は、異世界とつながった。そのために“魔法”というものがこの世界でも使えるようになった。かつて、物語の中だけだった“魔法”。それをこの世界風にアレンジし、星のエネルギーを用いて使うそれは何時しか“星惑交魔技(ステラースキル)”と呼ばれるようになった。


「火の刃、“ファイアエッジ”」


詠唱を終え、刀が火を纏う───そのステラースキル、通称“Si Skill”の中で、私が使った近接武器にエネルギーを纏わせるようなものを、“星惑交技術(ステラーアーツ)”───通称“Si Arts”という。


「火の弾、“ファイアショット”」


───そして。Si Skillの中でランが使った遠隔武器にエネルギーを纏わせるようなもの…もしくは純粋にエネルギーだけで構築・射出までを行うものを、“星惑交魔術(ステラースペル)”───通称“Si Spell”という。…何故、“ステラー”の略が“Si”なのかは私も知らない。


「───シッ!!」


アズマントは火に弱い。エネルギー消費削減のために一番弱い火属性Si Skillを使ったとしても余裕で倒せてしまう。


(アズマントの脅威は───)


そう思考を巡らせながら50体ものアズマントを切り伏せた時、アズマントに動きが見えた。


「ラン!“高速増殖”、来るよ!」


「畏まりました!」


高速増殖。アズマント最大の脅威といっても過言ではない。いくらアズマントが弱いといえど、数万、数十万にまで増殖されてしまえば私達よりも強い流れ星でも苦戦する。アズマント単体は非常に弱く、流れ星でなくとも…それこそ7歳くらいの子供でも簡単に倒せる星侵獣なのだが───こういう風に、“クラスター化”されると話は別だ。増殖し、100以上の数となったアズマントは1つに集まり、一つの大きな身体を構築し───“中級地上可変型可増殖式星界侵略魔獣アズマント・クラウド”へと変化する。


「でも、変化の間は無防備───」


増殖の後、アズマントの数は千を超えた。それが密集しているところに───投げ込むビン。


「───“コロナボム”!!」


私の宣言とともに起爆、周囲に熱風を放出する。その温度約1,779,540℉…セルシウス温度で表せば約999,727℃。…絶対温度100万Kは“太陽コロナ”と同等だ。それほどの熱、当然アズマントは耐えられない。


「……よし、と。」


熱風がやんだそこに、アズマントの姿は存在していなかった。


「駆除完了───っと。いこ、ラン」


「はい、主スティラ。」


この後は依頼主に報告して報酬受領。それから星間飛行船(ステラーシップ)に乗って次の星に。…ファンタジーで言う、冒険者。それが、私達でもある。

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