序章 第9話 拡散
宇宙は既に広大となっていた。揺らいでからすでに数十万年が経っていたのだ。
宇宙は晴れ上がっていた。それまで熱く満たされていたものが一気に晴れ上がり満たされていたものが拡散していく。
アザトースとナイアルラトホテップの邂逅はその後数十億年を要した。拡散の速度はどんどん速くなって行く。
その拡散に乗ってナイアルラトホテップは宇宙の隅々まで自らを満たした。主としたアザトースが居る玉座を除いて宇宙の全てを自らで満たしたのだ。
その際、主と自らの他にも同様の存在が在ることを把握した。但し主とは比べるまでもない矮小な存在のみだった。ナイアルラトホテップが我が主と仰いだ存在は、やはりこの宇宙で唯一無二の存在だったのだ。
ナイアルラトホテップがその存在を認識したものは例外なく自らの名を認識しているものだった。
自ら産み出したものを喰らうことで時間を司るアブホース。
全ての温度(高温だけではなく低温も)を司るクトゥグア。
全ての振動(波)を司るハスター。
全ての次元を支配し、その門であり、門の鍵であるヨグ=ソトース。
他にもいくつかの存在が確認できた。ナイアルラトホテップはその全てに主であるアザトースを王と認識させようとするが宇宙は急速な拡大し拡散していたので、全ての存在に認識させるには途方もない時間が必要だった。




