第3章 邪神大戦 第86話 神々の計画⑧
「それで、このあとはどうなるのだ?」
ナイアルラトホテップの問いは当然の問いだった。
主であるアザトースはその知性を剥奪されて封印されてしまった。ただただフルートの音が鳴り続ける、普通の精神の者であれば発狂してしまうような空間にだ。そのことも不満の一員であった。
全知全能の神であるはずの主アザトースが白痴の王と呼ばれるようになるとは到底容認できることではない。
ただ問われたノーデンスもその答えを全て持っている訳ではない。
「今、ある星に人間を発生させた。それが成長する過程で少しづつお前たちの存在を認識させる」
「それが目的か?」
「最終目的ではないがな。宇宙の理を人間に理解させる過程でお前たちの存在が不可欠なのだ」
「その辺りが理解できないのだが。我や我が主の存在が一体どう影響するというのだ」
「原初の恐怖。それを人間の遺伝子に植え付けなければならない。そのためにお前たちの存在が必要なのだ。ただそれはあくまで『過去の存在』でなければならない」
「なぜだ」
「お前たちと人間が同時期に存在してしまうとお前たちの恐怖が強すぎる。だから『過去の存在』である必要があるのだ」
いくら聞いてもナイアルラトホテップには理解が出来なかった。人間を産み出して成長させる。ただそのことだけに自分たちがノーデンスたちと戦争し敗れ封印される。そんなことをする必要があるとは思えない。それほど人間のという種族が重要なのか。
「ただの『過去の存在』では少し足りない。だからお前たちは消滅させるのではなく主なものは封印という形を取ったのだ。それがいずれ解かれてしまうかも知れない。その恐怖が一番適当な恐怖だと判断している」
「それが絶妙なバランスだと?」
「そうだ。情報は少しづつ、そして封印が解かれそうで解かれない。それが最適解だ」
「なるほどな。理解はできないが承知した。それで我の立場はどうなのだ?」
アザトースを初め主な者たちはそれぞれの場所や空間・次元に封印された。力の一端は現世界に影響を及ぼすことが出来るようだが基本的には解放はされない。
「お前は唯一自由で封印されない。それは我らが以後眠りに付いてしまうからだ」
「眠りに?」
「そうだ。そしてこの宇宙が終焉を迎えるまでは多分目覚めない。何かよほどの想定外の出来事でも起きない限りはな」
「ということは」
「そうだ。以後のことは全てお前が管理するのだ。お前の主の封印は解かれてはいけない。但し解けてしまう寸前に到る必要もある。我らがそれを管理しない。お前がやるのだ」
「なぜ我がそんなことを」
「それも」
「我が主との元からの約定ということか」




