第3章 邪神大戦 第85話 神々の計画⑦
「どうしてもその歴史をたどる必要があると言うのだな」
「この、今回の宇宙ではそういう事になっている、ということなのだ。そして、そのことについては当然我が主も了承しておられる」
「それがどうも解せないのだよ。なぜ我が主はそのようなことを是と仰ったのか。そもそもご自身がそうような設定をされた一員であったとしても、どうしてそれを忘れてしまっておられるのか」
「それも含めての設定であったのであろう」
ナイアルラトホテップにしても全てを完全に把握している訳ではない。もしかするとノーデンスたちですらそれほど変わらない立場なのであろう。ただナイアルラトホテップたちよりは少しだけ知識を事前に与えられていただけ、とうことだ。
「話が終わったようだな」
ヨグ=ソトースの視線の先には散り散りにその場を離れて行くアザトース配下の者たちの姿があったが敗残兵のようにしか見えなかった。
それからの戦いは悲惨なものであった。
誰も勝つとは思っていない。
誰も勝とうとも思っていない。
それでも戦わざるを得ないのだ。
そして地球に人類が生まれる。それは断続性のある発生ではない。今回の実験の為にイキなり人類を発生させたのだ。
更に知識は順を追って与えて行く。
ノーデンスたちとの戦いの中でほとんどの者は消滅してしまった。ただ一握りの後世に名を残すことになっている者たちだけが消滅を免れている。
クトゥルーたちは名を残す一団の一角だ。そしてクトゥルーは再び地球へと至る。クトゥルーは巨石都市を造って居所とする。後にルルイエと呼ばれるようになる都市だ。
「封印される無念よりも、それが既定の事実であったことの無念さが遥かに上回る」
そのクトゥルーの言葉は他のアザトース配下の者の総意でもあった。
「それにしても我が主アザトースを含めてヨグ=ソトースですら封印されるというのに、なぜナイアルラトホテップだけ封印されないでいるのだ」
それは誰にも判らなかった。当のナイアルラトホテップですら理解していなかったのだ。
更に言うとノーデンスたちにも完全に理解している者が居るとも思えなかった。
クトゥルーの問いに応えられる者など居なかったのだ。




