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序章 第8話 邂逅
「何者だ。」
いきなり問われた。初めての経験だった。
自らとは別の存在を初めて認識した瞬間だった。
「我は混沌。我こそが全ての混沌。」
答える必要はないはずだった。答えざるを得なかった。自らとの差異は絶望的だったからだ。但し、実際には差異は僅かだった。二者のエネルギ-量はほとんど拮抗していた。それがナイアルラトホテップには絶望的差異に感じられただけだ。
「名は?」
「我が名はナイアルラトホテップ。あなたは何者です?」
「我は万物の王。全ての始まりにして全ての終わり。」
「ご尊名をお伺いしても。」
「我が名はアザトース。原初にして唯一の王である。」
第三者から見ればその二者の邂逅は不可視のエネルギーの衝突でしかなかった。何かが起こっていることは確かだが識別できない事象だった。
二者は長い時間、お互いのことを深く深く認識していく。
二者の力はどちらも強大だったが、2の無限乗と3の無限乗の違いのようだった。どちらも無限であり元の差異は極小であり結果も無限大には違いない。
「我を万物の王と知らしめよ。」
最初の命令が下った。