第3章 邪神大戦 第77話 神々の黄昏⑨
(困っておるようだな)
それはいきなり現れた。正確には現れてはいない。姿は無いが思念だけが伝わってくるのだ。
「ノーデンスとやらか。よくここまで入り込めたものだな」
そこはアザトース軍の中枢とも言うべき惑星の一角の前線基地のような場所だった。当然様々な結界が何重にも張られている。味方ですら入るのに時間を要するくらいだ。
(まあこれ位はな。ところでもう一度聞くが困っているのではないか?)
その全てを見透かしたような言い様が気に食わなかったが困っていることは事実だった。
「困っていたらどうだというのだ」
(我が力を貸そうか、と申しておるのだ)
「どういう意味だ」
(お前がその配下たちを説得するのに協力しようという意味だ)
「なぜそのような助力をするのだ」
(我らの目的の遂行のため、ということだ。他意はない)
確かにノーデンスたちの目的を進めるには、今この戦いを一旦収める必要がある。そして、その収め方はアザトースたちの勝利であってはいけない。
しかしナイアルラトホテップたちからするとノーデンスたちの目的に協力する義理は無いのだ。それがこの世界の成り立ちに起因するのであっても、今のナイアルラトホテップたちには関係がない。
いや、全く関係がない訳ではないが、そんなものに従う義務もない。
「ナイアルラトホテップよ、さっきからお前は誰と話しておるのだ」
ヨグ=ソトースが問う。ヨグ=ソトースにはノーデンスの思念が伝わっていないようだった。
「なんだ、ノーデンスの言葉が届いていないのか」
「今ノーデンスがここに来ているのか?」
「そうだ。我に協力してくれるそうだ」
(お前が応と言うのであれば、そこのヨグ=ソトースとやらにも我の言葉が届くようにするがな)
「協力を依頼したらお前にも聞こえるようにするらしい。どうする?」
「お前の話は、そのノーデンスから聞いたものなのだろう。では直接我が聞いてみることも必要なのかも知れんな」
「ではノーデンスに協力を依頼することにしようか」




