第3章 邪神大戦 第75話 神々の黄昏⑦
「よし、判った。お前の言う通りにするとしよう」
アザトースの言葉はナイアルラトホテップにしても意外な物だった。そんな簡単に結論を出せる問題ではないのだ。
「よろしいのですか?」
「よい、と言っておる。色々と思う所はあるが、この世界の成り立ちから考えると仕方あるまい。我にそう思わせることができたと思うが良い」
ナイアルラトホテップは平伏するしかなかった。ここでアザトースを説得できなければ戦乱は続く。それは全てが消滅(あらゆる意味での消滅)してしまう。自分たちと相手方の消滅は、すなわちこの宇宙の消滅に直結してしまうのだ。
アザトースは全てを理解し決断した。ただそれは『この宇宙が消滅するよりはいくらかマシ』という消極的な理由だった。
そもそもナイアルラトホテップはアザトースと刺し違えても納得してもらうつもりだった。ただナイアルラトホテップがいくら命を掛けて刺し違える気になってもアザトースに傷一つも付けられないだろう。
勿論ナイアルラトホテップにアザトースと敵対する気など毛頭ない。ナイアルラトホテップとしても苦渋の選択ではあるのだ。
「では私は我が主のご選択をヨグ=ソトース以下配下の者に周知してまいります」
ナイアルラトホテップは直ぐにアザトースの御前を辞した。アザトースの意に染まない決断をしたことによる威圧感の前に少し存在が消えかかってしまっていたからだ。
「さて、ヨグ=ソトースをとりあえずなんとかしないとな」
ナイアルラトホテップはヨグ=ソトースの元まで戻って来た。
「我が王はどうであった?」
「なんとかご承諾いただけた」
「本当か?」
「嘘を言ってどうする」
「まあ、そうだな。しかしよく我が王はご決断された。我はそのご意思に従うまでだ」
「良いのか?」
「良いも悪いも無い。我の意志など些細なことだ。我が主のご意思が最優先であろう。それはお前も一緒だと思うが」
「確かにな。問題はクトゥルーあたりの説得か」
「説得する必要はあるまい。我が王のご意思だ、それに反抗する者がいる筈がなかろう」
ヨグ=ソトースの思いは思いとしてナイアルラトホテップはそう簡単に行くとは思っていない。いくらアザトースの意志であっても反抗する者は現れる筈だと思っている。
「確かにそうなのだが、もし反対する者が現れたら、それを力付くでも従わせることが我らの役目だ。我が王のお手を煩わせる訳には行かない」
「当然だ。万が一逆らう者は我が消滅させてくれよう。少しくらいなら滅しても問題あるまい」
大きくバランスを崩さなければ確かに問題ないかも知れない。ただその境界線を見極めることは至極困難なことになりそうだ。
陣営に属する全ての者が従うことが理想ではあるが、ナイアルラトホテップはそれが実現可能だとも思ってはいなかった。




