第3章 邪神大戦 第74話 神々の黄昏⑥
結局ナイアルラトホテップはヨグ=ソトースを連れて来れなかったので一人でアザトースの前に現れた。。そして着くなり問われる。
「戦況はどうなっておる。良報を持って参ったのであろうな」
アザトースの言葉は圧倒的な威圧感を纏っている。ナイアルラトホテップですら抗えないほどのものだ。
「我が王よ、ご無沙汰をしてしまいました。戦況は今のところ一進一退というところです」
「それは勝っているのか負けているのか、どちらなのだ。はっきり申すが良い」
「申し訳ございません。負けたわけではありませんが、勝っても居ない、というところです」
「ナイアルラトホテップよ、我の言葉を確と聞いておったのか。我は勝っているのか負けているのか、どちらかを聞いておるのだ」
アザトースの声には少しだけ苛立ちが垣間見れた。ただナイアルラトホテップとしてはそれを判った上で応えている。
「我が王よ、今私がお応えしたことは全くの事実でございますので、それ以上のこともそれ以下のことも無いのです。どちらとも言えない、というのが正確なご報告になるのです」
アザトースは全くもって納得していない。ただナイアルラトホテップがそう言うのだ、他に言いようがないのだろうと、その曖昧な報告を許すことにした。
「それでお前はそんな報告をするためにここに来たのか?」
「いえ、我が王がお聞きになられましたのでお応えしただけです。我が御前に罷り出ましたのは別のご報告があったからです」
「それは何だ、申してみろ」
それからナイアルラトホテップはノーデンスとの話を説明し始めた。
「それは敵ではないか。お前は我を裏切ったと言うのか?」
「それは違います、我が王よ。ちゃんと最後まで聞いてください」
ナイアルラトホテップの話はアザトースにとっては肯んじることができることではなかった。
「そんな事の為に我らは今まで戦ってきたのか」
同じことをヨグ=ソトースにも言われたばかりだった。誰でもそう感じるのは仕方ないことだ。提案しているナイアルラトホテップですら同じ感想を持ったのだ。
ただ、その上でナイアルラトホテップは止むを得ないと判断したのだ。ナイアルラトホテップとしても納得している訳ではない。
「そうです、我が王よ。我ら生まれ、我らが今までやってきたことは、全てこの為にあっと、ということなのです」
アザトースは考え込んでしまった。ナイアルラトホテップと違いアザトースは自らを万物の王として認識している。そしてそれはほぼ確実なことだったはずだ。
「少し考える。お前は控えておれ」
アザトースはそういうと自身の中に没入してしまった。ナイアルラトホテップは御前から退席する。
アザトースとしてはナイアルラトホテップやヨグ=ソトースと違って、そう簡単には結論を出せるものではなかった。




