第3章 邪神大戦 第72話 神々の黄昏④
(我らを封印できるとでも思っているのか?)
「我らを封印できるのだ、お前たちも当然封印できるのであろう。それが宇宙のあるべき姿だ」
(お前たちがそのような思考をすることが面白いな)
ノーデンスは姿は見せずに思念のみを送ってくる。
「それでノーデンスとやら、結局貴様はここに何をしに来たのだ」
(我が来た理由を問うておるのか)
「そうだ、そう言っている」
ノーデンスが来た理由は想像が付かなかった。こちらの得た情報を確認しに来ただけであれば、声を掛ける必要がない筈だ。
ナイアルラトホテップ同様ノーデンスも時間稼ぎにきたのかも知れない。ナイアルラトホテップがノーデンスたちを封印する方法を見付けられないように邪魔をしに来たのか。
(我が来た理由はお前との交渉だ)
「我との交渉?どういうことだ、我らは敵対しているのだぞ」
和睦でもしようというのか。それをこちらが許さないのは判っている筈だ。万物の王を標榜しているのだ、他者との和睦など在り得ない。
(敵対している訳ではないぞ。アザトースが万物の王を名乗りたいのであれば名乗ればよいのだ)
「それならば何故我らは戦っているのだ?」
おかしな話だった。当然ノーデンスたちは万物の王を名乗るアザトースを敵視していたからこそ、その配下の末端を取り込む様なことをしていたのではなかったのか?
(意味などない。そうだ、意味などないのだ)
なぜかノーデンスは自らの言葉を自ら確認するかのように繰り返した。
「意味もなく戦っているというのか」
(その通りだ。それが決められたことの様に我らは戦っているのだ)
ノーデンスは自らの発言が意図したものではないかのような口調だった。誰かに、或いは何かに言わされている、という感じだ。
「お前が何を言っているのか、全く判らない。それで一体何を交渉しようと言うのだ」
それからしばらくして、漸くナイアルラトホテップは図書館を離れるのだった。




