第3章 邪神大戦 第66話 神々の戦い⑧
クトゥルーの得意としているのは精神支配だ。戦場である惑星に立っても相手の精神を支配しようとしている。相手は地球で支配した古のものたちとは全く異なっていた。
精神支配をしようとしても相手の個の部分がない。相手が群体であることも精神支配を試みて初めて気が付いたくらいだ。
相手を精神支配する、ということは群体全てを支配することになる。群体全てが一つの意志で統一されているからだ。
「何だ、どういうことだ。お前は、というかお前たちは何なのだ」
相手が個ではなく当然名を持っている訳もない。相手をどう呼べばいいかすら判らない。
「我らは我らだ。一であり全、全であり一。全ては我らの意志である」
そういう相手は人型になっているが、やはり精神は群体の一部でしかない。
クトゥルーも本来の不定形や地球で実体化した時の姿では無く人型に合わせている。それが誰の指示で誰の作戦なのか判らなかったが理由もなく従っているクトゥルーだった。
クトゥルーは相変わらず相手を支配しようとする。ただ相手はそれに抗う様子がない。今目の前にいる相手は群体の一部であり個が無いため支配しきれないのだ。
しかし、クトゥルーはその先の他の群体の中に入り込み始めた。群体で繋がっているので目の前の一部から群体の本体というか別の群体の一部に入り込むことが可能だったのだ。
「完全な個の無い群体、と言う訳でもなさそうだ」
クトゥルーは群体の中で中心となっている存在を感知していた。その中で一番の中心はノーデンスと呼ばれているようだ。
そこまで掴んで、その全てを精神支配しようとして逆にクトゥルーの精神が崩壊してしまった。相手はクトゥルーの精神を支配しようとした訳ではない。ただクトゥルーの精神が物理的に容量不足になってしまったのだ。
「クトゥルーよ、一旦戻るが良い」
ヨグ=ソトースは戦場からクトゥルーを呼び戻した。流石に相手もクトゥルークラスには質量同士の衝突を仕掛けては来ない。
一旦ヨグ=ソトースは名付けたものたちや急場しのぎにシュブ=ニグラスと産み出したものたちを時間稼ぎに送り出す。
そしてヨグ=ソトースは呼び戻したクトゥルーの精神を修復する。重要な情報を得られた可能性があったからだ。それにクトゥルークラスは使い捨てにするにはあまりにも勿体ない。
「では、そのノーデンスという者が中心だというのだな」
「それは間違いありません、我が父よ」
クトゥルーの精神は完全に修復できたので、その記憶も完全に修復できたのだ。




