第3章 邪神大戦 第64話 神々の戦い⑥
ヨグ=ソトースとシュブ=ニグラスと間に産まれた者たちの多くはまだ戦場に到達していない。そして、ヨグ=ソトースたちから生まれ出ていない、強き者たちも未だ到着していなかった。
それは作戦として相手の出方を見極める、という方針を決めていたからだったが、立案、提案したナイアルラトホテップは今図書館の知恵を探して行っているので不在だった。
「ナイアルラトホテップはいつ戻るのだ。そのままでは結局相手にこちらの全ての配下たちを潰されてしまうだけだ」
「そなたが焦っても仕方なかろう。彼の者に任せたのだ、待つしかあるまいに」
シュブ=ニグラスに窘められたが、ヨグ=ソトースは焦っている訳ではなかった。ただ打つ手が無いのも確かだったのだ。
「我が主もさぞ不快に思われていることであろう」
「直接お聞きしたのか?」
「できるものか。ナイアルラトホテップと共にでなければ御前に罷り出ると我だけ不興を買う事になってしまうではないか」
「なんぞ、怖いのか?」
「馬鹿を言うでは無い。怖くない訳がなかろう」
「しかし、そなたをアザトース様が消滅することは決してあるまい」
「それはそうなのだが」
「そなたが怖いと言う感情を持ち合わせておることが、我にはとても興味深いぞ」
「揶揄うでないわ。我とて消滅されなくとも、どのような罰をうけるのか全く予想ができないことが恐ろしいのだ。我が主であれば我の想像を遥かに超えてくるであろうからな」
「我の想像も越えような。さすがはアザトース様じゃ。我が夫であるそなたをして恐ろしいと言わしめるのであるからな」
「揶揄うなと言っておるだろう。それにしても、今戦っている相手は一体何者なのだろう。そして、何故このような戦い方しかできないのであろうな」
配下の者たちはその能力を全て封印され、ただ質量・エネルギーの塊として直接ぶつかっているだけなのだ。
そして最近ではどうも相手に吸収されているようだった。人型になっているにも関わらず、その遺体が残らないのだ。
「相手の情報は無いのか?」
「今のところは無いな。我らとは別の者、ということは判っているのだが」
「なぜ別の者だと判るのだ?」
「我らはエネルギー体ではあっても一定の実態を常時持ち合わせて居るが、あの者たちはそれが無い。必要な時だけ実体化する、というようなことかも知れん。それにどうも我らの様に唯一の個体ではなく全体が一つ、というか全てが同じ意志と意図を持っているかのようだ」
「それはそれで怖いのではないか?」
「それはそれで怖いな。しかし、何故あのような戦いを強いられておるのじゃ?」
「それは判らない。もしかすると我が主はご存知なのかも知れないが、聞ける訳もない」
「いずれにしても現状の打開はナイアルラトホテップ次第ということか」
「そうだな。我がこの場を動けない以上、あ奴が戻るまで戦況の膠着を続けるしかあるまい」
結局、一定の期間を開けて配下の者たちを戦場に送り込むことを、ただダラダラと続けているだけだった。




