第3章 邪神大戦 第62話 神々の戦い④
「やはり図書館へ行ってまいりましょう」
ナイアルラトホテップが何度目かの提案をする。いままでアザトースはそれを許さなかった。誰が収めたものなのかすら判らない図書館とやらの知識を利用することに抵抗があったのだ。
ただ、その図書館の知恵を借りて配下の力あるものたちを産み出せたことはあった。それは偶々上手く行ったのであって、いつも成功するとは限らないのだ。
それと、当時はその存在を認識していなかった、今戦っている存在が在る。その相手がナイアルラトホテップたちに見つけさせるために、その場所に判り易いようにしておいた、ということもあり得る。
一度信用させておいて、決定的な場面で致命的なミスを犯すよう誘導するために、そんな手の込んだことをしたのかも知れない。
アザトースにとっては全てが疑わしい。そもそも存在を多次元に同時に存在することによって隠していた相手なのだ、どんな手を使って来るかなんてわかるはずもない。
しかし、ナイアルラトホテップは相手に合わせて戦う場所を選定し、相手に合わせてその力や能力に制限を掛けた状態で戦っている。アザトースには、その辺りのことも納得がいっていなかった。
まさか、ナイアルラトホテップと相手が通じていてアザトースたちを裏切ったと?
口にも態度にも出していないし、頭の中を探られたときのため(ナイアルラトホテップはその能力はあったがアザトースに向かって使ったことはない)に考えることもしていない。
逆にアザトースにもナイアルラトホテップの思考を読む能力はあるが使ったことは無い。ナイアルラトホテップに対しての牽制の意味で使ってもいいのだが、今はまだその時ではないと思っている。
基本的にはナイアルラトホテップが裏切ることは考えてはいない。アザトースを裏切ってもメリットは無い。
逆に裏切り者をアザトースは許さないので消滅させられてしまうかも知れない。その際、宇宙のエネルギーバランスが崩れてしまって最悪崩壊してしまうかも知れないが、それよりも裏切り者の粛正がアザトースにとっては優先される。
アザトースにしてみれば裏切り者を許すくらいなら宇宙が崩壊しても構わないのだ。
ナイアルラトホテップからすると、もしかしたら裏切っているかも知れないと思われていることは心外だった。そう思われている証拠もないがアザトースの図書館に対しての反応はそう思わせるには少し弱いが可能性を考えるには弱過ぎることは無い。
様々な葛藤の元、アザトースはついに決断する。
「判った、図書館に行って打開策を見つけてまいれ」
アザトースの指示を受けてナイアルラトホテップは図書館と向かう。
一度場所が変わってしまっていたが、既に発見していたので直ぐに向えた。
図書館に着くとナイアルラトホテップは直ぐに司書を探す。円錐型の生物だ。意思の疎通は難しかったが、居ないよりはマシというものだった。
ナイアルラトホテップが何かの打開策を見つけるまで戦いが一旦休止している訳ではない。
アザトースは途切れることなく配下の者を戦いの場である惑星に送り続けている。
それはこちらが何かの策を準備していることを悟られないためだった。そんな事の為に駆り出される配下の者たちにとっては自らの忠誠心との鬩ぎあいではあったが、抗う術もなかった。
ナイアルラトホテップとしては配下の者たちが少しずつ相手に飲み込まれていくことを一刻も早く止めたいのだがなかなか司書も見つからない。
見つけたとしても、まずはこちらの意図を伝えないといけない。精神感応では伝わらないものもあった。
前回訪れた時は時間の制限も無かったので司書の助けを借りずに見つけることが出来たが、今回は少しでも早く見つけたい。司書の手を借りるのが一番の近道なのだ。




