第2章 神々 第51話 神々の誕生③
計画は念には念を入れる必要がある。そもそもこの世界の根幹にかかわる計画なのだ。それに対して個の存在はバグである。但し、織り込み済みのバグだ。
小さな力の個を侵食していくスピードは遅い。遅々として進まないが、逆に言うと着実に少しづつ進んでいる。個の中心たる強大な存在に全てを悟られる前に包囲網たる存在を固めないといけない。
強大なる個は群の力を余裕で凌駕している。その力の源を探ると、強大なる個への崇拝が強ければ強いほど強くなっている。最大なる強大な個は、取り巻きに強大な個も多く従えている。これ以上力を蓄えさせるわけには行かない。
その存在は織り込み済みではあるが、強大過ぎる個は計画の妨げになる可能性が高すぎる。高いリスクは排除できないのであれば下げるしかない。
揺らいでいる群は濃淡が生じ始めてきている。計画を遂行する上で群を導く存在がその濃淡に現れだした。
(今のところは何にも誰にも気づかれてはいない。)
(それがいつまで続くというのだ。)
(それは判らない。細心の注意を払ってはいるが、既に強大なる個を崇拝する気持ちを削ぐことに成功した数が大量になってきている。そろそろ何かを気づく頃なのかも知れない。)
自己と自己との会話ではあるが考えを纏めるには必要な事のようだ。
(一番飛びぬけて強大な力を有する個は名をアザトースというようだ。)
(名とは何だ?)
(他と区別するために必要な記号だ。)
(そんなものが必要なのか?)
(我らの様に群が全てであれば不要であろうが、全く違う個であれば、その個の個性を表す名は必要なのかも知れない。)
(なんだか逆のような気もするがな。全く違う個であれば別に区別する必要もなかろう。)
(我らにも名というものは必要なのであろうか。)
(特に不便ではないのだ、今のところは不要でよかろう。いずれ必要になる時も来るかもしれんがな。)
そして、その時はそう遠くなく訪れるのだった。




