第2章 神々 第49話 神々の誕生
それは唐突に起こった。ただの揺らいだだけだ。無だったはずが、ただ一瞬揺らいだ。それが全てだった。全ての始まりだった。
次の瞬間には膨大になっていた。ただ膨大になっていた。何者も追いつけない速さで膨大になった。
そして急に晴れ渡った。混沌から秩序に向かい始めた瞬間だ。温度は徐々に下がり始めていた。
その中心にあった。認識できない存在。可視化できない存在。
ただ単純で膨大なエネルギー。ただそこに存在する膨大な質量。始まりはそんな単純な事だった。
一つの世界、一つの宇宙。存在するのは個ではなく群。群が一つの世界に留まらず他の宇宙にも増殖していった。留まることを知らない群。重なって広がる幾つもの宇宙。そのすべてに群は広がっていく。そのすべてに意識が染み渡って行く。
意識は個ではなく群。群が重なり大きな群となり、全てを満たす群となる。
群である意識は自我を持つようになるが群であるため自己が無い自我を持つ。
そして、意識は思い出す。自らの存在の在り方を。一旦拡散してしまったことにより、意識は一旦リセットされてしまっている。
そして、意識は思い出す。自らが生み出す存在であったことを。
生み出したことを思い出してからでも、特に何事も起こらない。特に何もすることもない。ただ全ての次元の全ての世界に自らを広げているだけだ。
何か自分たちとは相容れないものの存在を認識した。それでも特に何も起こらない。特に何もすることもない。
その存在をどうにかしようとも思わない。ただ在るのであれば在ればいい。こちらから何か接触する気もない。
相手は個、こちらは群。
全ての次元に同時に在る群なので相手からは認識されてはいない。次元を渡る個もあるようだが、それでも認識はされていない。
群はこの宇宙を生み出す過程である計画を立てていた。そのことを思い出した。
個の存在はその計画には少し邪魔な可能性がある。但し計画の全てを思い出した訳でも無かった。全てを思い出した時、個についてどうすべきか、群は決める時が来るのであろう。
個は各次元の宇宙を席巻していく。個は自分の勢力を広げることに夢中になっている。まだ群については認識できてはいない。




