第1章 発端 第45話 始まりの始まり⑦
「なるほどな。」
突然アザトースの精神が戻って来た。身動きしなくなってからまた数万年は経っていた。
「どうなされましたか、我が主よ。」
「やっと判ったぞ、その違和感とやらの正体がな。」
ナイアルラトホテップやヨグ=ソトースがいくら探しても手掛りすら得られなかったものを、数万年かかったとはいえアザトースは正体を掴んだというのだ。万物の王としては面目躍如というところか。
「それで違和感の正体とは何だったのですか?」
「違和感の正体とは、そうだな中々表現することが難しいのだが、我らのような物理的存在ではない、というものだな。また我らのような精神的エネルギ―体でもない、というものだ。」
「今少しご説明をいただけませんか?」
ナイアルラトホテップにも全く理解が出来ない。
「そうだな。まずどうして違和感の正体がそれだと判ったのかを話そうか。」
アザトースによるとヨグ=ソトースの探査がヒントになったらしい。全ての次元の全ての場所を探して見つからなかった、という報告がだ。
「そこで全ての次元を同時に隈なく探してみたのだ。それは全ての次元に薄く薄く存在していた。一つ一つの次元では感知できないほどの薄さだ。こやつは狡猾ではあるな。我々に感知できないようにしておったのだ。」
確かにナイアルラトホテップもヨグ=ソトースと色んな次元で隈なく探してはいたのだが、それを予想していたのか、全ての次元に同時に存在を隠していたのか。
「その存在が我らが配下に組み入れた様々な存在を少しずつ支配下にしていったのですね。」
「そうだな。それも我への忠誠を剥奪するようなやり方ではなく、という狡猾さも加えてな。」
「それは排除すべき敵、と考えてよろしいのでしょうか。」
アザトースは少し考えて答えた。
「うむ、それで良かろう。どんな者であろうと我の意に沿わない者を許す訳にも行くまい。我は万物の王なのでな。」
アザトースはやることが出来て単純に喜んでいたのだった。
「では我が主、その者を排除する準備を始めさせていただきます。」
ナイアルラトホテップにしても得体の知れない敵との戦いに少し高揚するのだった。




