第1章 発端 第40話 始まりの始まり②
ナイアルラトホテップは少しの違和感を感じていた。何かがおかしい。主であるアザトースが万物の王であることを知らしめることだけを任務として遂行していたのだが、それがほぼ全宇宙に生き渡ったと思われる。
違和感の正体は判らなかった。アザトヘスの配下に組み入れた数多くの個体たちが、どうも連絡が取りにくい状態になっている。初期のころに配下とした者たちは問題ないのだが、ナイアルラトホテップが宇宙の端まで探して配下とした者たちとのコンタクトが取りにくいのだ。
もう一度全ての者たちを集める必要があるのか、と少しナイアルラトホテップは途方に暮れかけた。ここまでも数億年かかっているのだ。また数億年かけて再構築する必要があるのか。
アザトースを万物の王として、自らの主として認識させることに一旦は成功しているものの、今現在がどうなっているのか判らないでは主の命に背いてしまっているかも知れない。アザトース本人は何も指摘しないであろうがナイアルラトホテップ自身が納得いかない部分がある。
「ヨグ=ソトースよ。」
ナイアルラトホテップはヨグ=ソトースを訪ねた。
「なんだ、久しいな、ナイアルラテホテップよ。どうした。」
「実は、お前に少し手伝って欲しいことがあるのだ。」
「なんと珍しいことがあるものだな。我に頼み事など初めてのことだ。それで、何をすればいいのだ。」
ヨグ=ソトースは面白がっていた。なんでも全て判っているかのようなナイアルラテホテップが頼みごとがある、などと言い出すなんて想像すらしていなかったからだ。そうなると逆にかなり切羽詰まったことになっているのかも知れない。笑っていられない状況なのか。
「単純な事なのだがな。お前の力で宇宙全土を走査してほしいのだ。一度我が主の配下になったものたちとのコンタクトが取れにくくなっているのだ。我が一々確認するには、また途方もない時間がかかってしまう。そこでだ、お前の能力ならそれほど時間はかからないだろうと思うのだが、どうだろうか。」
「なるほど、判った直ぐに取り掛かろう。」
ヨグ=ソトースは出来得る限りの広範囲で走査を始めた。他次元でも同様に。
「我も力を貸すので速く終わらすことが出来よう。」
シュブ=ニグラスも聞きつけて協力してくれるようだ。もちろんナイアルラテホテップもヨグ=ソトースと同調する。そうして宇宙全土の走査が時間はかかったがなんとか終えることが出来た。
「これはいったいどういう事なのか。」
走査の結果はナイアルラテホテップたちの予想もしていなかったものだった。




