第1章 発端 第39話 始まりの始まり
アザトースは不思議に思っていた。ナイアルラトホテップが数々の唯一無二の者たちを連れて来ては忠誠を誓わせていく。その数は相当数に上っていた。
他方、クトゥルーからの報告にあったように古のものと呼ばれるものたちは同種の者が多数存在するらしい。
アザトースはこの宇宙にただ一人である。同種の者は居ない。また、アザトースとナイアルラトホテップは決して同種でもない。全くの別物だ。それと古のものたちとの違いは何だ?
古のものたちは、また個々の違いは多少あるらしい。その古のものたちが作り出したショゴスというものたちはほぼ個々の違いはない。そしてその意思も同一であり共通しているらしい。それが特別なものなのかどうかは判らない。アザトースにしてもこの世の全て、森羅万象を把握している訳ではないのだ。
「我が主よ。」
「おお、ナイアルラトホテップ、久しいな。最近は我の元に連れてくる者たちが減って来たのではないか?」
ナイアルラトホテップが連れて来ていた者は、ここ数万年絶えていた。宇宙の隅々まで巡って探しているが、そろそろ尽きてしまったのだろうか。
「我が主、申し訳ありません。ただ主が万物の王であると知らしめることができた範囲は、ほぼこの宇宙全体を既に網羅しております。新たに生まれ出ない限り、次に連れてくることが出来る者は居りません。」
「そうか。ではお前の役目も完了した、という訳だな。ご苦労であった。」
「滅相もございません。ヨグ=ソトースとシュブ=ニグラスの間には今も生まれ出てくる者たちが居ります。それらの者たちは当然御前に連れて参る所存です。」
「そうか。まあよい。それで、次には何をすればよいのだ。今まで我はただここでお前が来るのをただ待って居った。そのお前がもう殆ど来ない現状で、我は何をすればよいと思う。」
「我が主には、ここで万物の王として君臨していただけれれば、と思っております。」
「君臨とは具体的に何をどうすればいいのだ。もう数億年はここで暇を持て余しておるのだぞ。」
正直なところ、ナイアルラトホテップにも妙案はなかった。自らは宇宙の隅々まで駆け回って来て、そこそこ忙しかったのだ。確かに待っているだけのアザトースはやることが無いだろう。それが、今まではたとえ少しでも配下が増える度に訪れる者があったのが、もうほとんど誰も来なくなってしまったのだ。
主が納得する何かをなさねばならない。ナイアルラトホテップは難題を抱えてしまった。




