序章 第35話 支配する者⑦
「そうは言うがな、ショゴスと言う生き物の最大の武器は数なのだ。圧倒的物量攻撃で我も為す術が無かったのだ。ナイアルラトホテップよ、お前も同じように数で押し切られる羽目になることは間違いないぞ。」
クトゥルーは負け惜しみを言う。ナイアルラトホテップも同じことを感じてはいたが、もっと色々とやり様はあったはずだとも思う。
「それで、先住のものたちは何処に居るのだ。」
「この大陸の大きな都市に集中しているようだ。我が降り立った場所からそこに向かう途中にショゴスに襲われたのだ。」
「最初からその都市に降り立てばよかったのではないか。」
クトゥルーは返事をしなかった。そんなことは承知している。降り立つ場所を少し間違えただけだ。誰にでも間違いはあろう。それをこのナイアルラトホテップという奴は。
クトゥルーは悉くナイアルラトホテップのことが気に入らなかった。アザトースやヨグ=ソトースと同等の力を有していることも気に食わない。父であるヨグ=ソトースと万物の王と認めるアザトースの他に自分より力を持っている存在が許せなかった。
クトゥルーは精神支配を得意としている。物理的な攻撃となると他の兄弟たちからするとやや劣ってしまう。それでも十分対抗可能だと地球に送り込まれたのだ。その指図をナイアルラトホテップがしていることも気に入らないことの一つだった。
「改めて問うが、お前に任せてもよいのだな?」
「勿論。さっさとアザトースの元に帰るが良いわ。」
「では、また様子を見に来るから、それまでにはこの星を我が物にして置くことだ。」
「言われなくとも、直ぐに完全に支配して見せるわ。」
クトゥルーの矜持は今の所ズタズタにさせている。言葉の通り直ぐに支配を完結しなければ自分の精神が崩壊しそうだった。
 




