序章 第34話 支配する者⑥
クトゥルーは徐々に古のものたちの年に近づいてくる。但しその歩みはゆっくりだった。その理由は簡単だ。クトゥルーは古のものたちの精神にプレッシャーをかけつつ近づいてきているのだった。少しづつ少しづつ時間を掛けて古のものたちの精神を支配しようとしていた。完全に支配できれば戦う必要がない。但し、クトゥルーの目的が何なのか、今のところ古のものたちには判らなかった。
徐々に精神支配を受ける者が出始めた。このままでは本当に完全支配されてしまう。それも恐怖の感情による支配だ。
古のものはクトゥルーに抗う術を模索した。クトゥルーが都市に至るまで、もうそれほど時間は残されてはいない。
古のものはとりあえず物理的にクトゥルーを止めるため無数のショゴスの大軍を差し向けた。ショゴスの防壁を作り、その対応に追わせることでクトゥルーの精神支配を一旦停止させるのだ。
その作戦はある程度有効だった。精神支配攻撃が止んだのだ。クトゥルーも混沌としていた姿を定型に変えて対応し始めた。ショゴスを排除するには触手が必要だった。そして固い身体。それまでほぼ不定形であったものを形あるものに変化せざるを得なかった。
クトゥルーは顔のような部分から複数の触手を伸ばしショゴスを排除する。ただその圧倒的な量によってクトゥルーは埋もれてしまう。ショゴスはクトゥルーの周囲数平方キロメートルに渡り殺到しクトゥルーを埋める。高さも1キロメートルまで積み重なっていた。
古のものはショゴスの処遇に困っていたのだが、クトゥルーを埋めてしまえるのなら問題は解決だ。こうしてクトゥルーがショゴスの下敷きになって身動きが取れないまま長い年月が過ぎた。
「なんだこの有様は。クトゥルーよ地球を支配しろと言ったが埋まっていろとは言っておらんぞ。」
ナイアルラトホテップがクトェルーによる地球支配の様子を見に来た時のことだ。姿が見えないクトゥルーを探していると大量の何かに埋め尽くされた一帯があった、そこにクトゥルーが埋まっている。どうも身動きがとれないようだ。
「情けない奴め、地球程度の支配すら手に余るのか。」
クトゥルーは強大な力を持っているとはいえ、その使い方に長けているとは言い難たかった。
ナイアルラトホテップは今でも唯一無二な存在をヨグ=ソトースに引き合わせてその配下にするため宇宙を飛び回っていた。
ヨグ=ソトースとシュブ=ニグラスは新しい存在を産み出すことで多忙だった。
アブ=ホースは子を産み、その子を喰らい、宇宙の時間を進める役割を離れる訳には行かなかった。
クトゥグアはナイアルラトホテップのいう事を聞かないで自由奔放に飛び回っている。(アザトースの呼び出しには応じていた。)
地球の支配などに手を割いている余裕はなかったので比較的には力の弱いクトゥルーに任せたのだ。それがいつまで経っても報告がないので確認しに来るとこの為体だった。
 




