序章 第33話 支配する者⑤
そんな時だった。また宇宙から何かが飛来した。それは前回のような別れた古のものの同族ではなかった。
たった一体で飛来したそれは、古のものとは全く違う別種の何かだった。
そもそもサイズが違う。古のものは約2m程度の海百合状の生物で頭部には五芒星の形をした突起物があった。その一つ一つに役割があり、それが目であったり触覚であったりした。
飛来したものは古のものよりもかなり大きかった。形も全く違う。全体はタコのようでもイカのようでもあり顔と思しきあたりからは無数の触手が伸びていた。翼のようなものがある事は古のものと共通していたが、古のものには最早その翼で飛翔する能力は失われつつあった。退化により徐々に翼は小さくなっていった。
飛来したものはクトゥルーと言った。たった一つ、その名前で呼ばれる個体だった。宇宙でクトゥルーと呼ばれる個体は他にはない。
クトゥルーが地球に飛来した理由は古のものには判らなかった。自分たちは自らの繁栄のため安住の地を求めて宇宙を彷徨っていた時、地球にたどり着いたのだ。
クトゥルーが古のものと同様に地球を安住の地とするために飛来したのであれば、場合によっては共存することも可能なのかもしれない。
そうではなく、クトゥルーが古のものを滅ぼすために飛来したとか、共存する気が無く先住の者を全滅させる気でいるのなら戦わなければならない。その際、ショゴスはかなり有効な武器になり得る。古のものには自らが戦う能力に掛けてしまっていることを自覚していた。ショゴスと戦わせて負ければ自分たちが駆逐されてしまうのだ。
その時は古のものはまた宇宙に安生の地を求める旅に出なければならない。しかし古のものにはその翼で飛翔する能力はなかった。地球からでなければならないということは滅亡するしかない、という事だった。
生き残るためにはクトゥルーとの共存か、生存競争に打ち勝つしかなかった。
古のものたちの中心となる都市から少し離れた場所に降り立ったクトゥルーは都市へと移動を始めた。古のものにはクトゥルーと意思の疎通が出来るかどうかさえ判らなかった。
 




