序章 第30話 支配する者②
地球。今となれば人類がその種族の春を謳歌し席巻しているかのように見える。ただ、それは「見える」というだけで本当にそうである訳ではない。地球を人類が支配しているのは地球やそれこそ宇宙全体からするとほんの数瞬にしか過ぎない。
地球に最初に降り立ったのはナイアルラトホテップやアザトースたちとは別の、別種のものだった。後に「古のもの」と呼ばれることになるそれは個が無かった。全体が群であり全てを共有していた。自然発生した植物のようなものが気の遠くなるような時間を経て意識を持つようになり、知識を得て宇宙へと旅立ったのだ。但し知識を得たのは偶然ではない。それは与えられたものだった。
地球へと降り立ったのは「古のもの」にとって当時の地球の環境が繁殖に適していたからだった。それを探し当てるだけの知識や経験があった。「古のもの」にとっては自らの種を増殖させることだけが目的だった。そのことに都合が良いものは全て行った。その一つが地球への飛来だった。
最初の降り立った場所に都市を作った。都市を作ったり労働させるための下僕としての生物も作った。それは後に「ショゴス」と呼ばれるようになった。
最初に作った都市は地球の中で一番環境が良い場所だった。寒くもなく暑くもなくエネルギーに変えるべき水分(海)もあった。広大な陸地もあり「古のもの」が利用できる巨石採掘場もあった。勿論それらを兼ね備えた場所を最初から選んでいたのだ。




