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序章 第3話 個
膨大な距離。宇宙に広がる理。その制約に囚われない存在。
この一瞬で移動できるはずのない距離を散歩でもするかの様に移動してしまう、何にも囚われない存在。
個々の違いにお互いがお互いを認識し始めたことが始まりだった。
自らとは違う個。それを相容れないものとして認識してしまう自我。
自他の区別は最初、特には無かった。別個の存在ではあるが、特にそれだけのことだったのだ。
水。炎。風。大地。光。波。質量。重元素。
有と有らゆるものに対して侵食していく。
それらが徐々に各々の特徴となって、それぞれ別の個として歩みを始めたのだ。




