序章 第25話 クトゥルー
「我が名はクトゥルー」
ヨグ=ソトースとシュブ=ニグラスの間に産まれた存在は生まれ出てすぐに自我を認識しそう言い放った。
クトゥルーを産み出してもヨグ=ソトースとシュブ=ニグラスの質量、エネルギーの総量は変化が無かった。だが生まれ出たクトゥルーのそれも遜色のない質量、エネルギーだった。その法則は判らないが宇宙の物理的法則からは逸脱していた。
名前だけを言い放ち、クトゥルーはその場を離れた。行く当てが在るわけではないが、本能の赴くままに、自らの移動方法を確かめるかのように飛び去った。
「いいのか、あのまま行かせて。」
ナイアルラトホテップが問う。
「よいではないか。何かの時にはすぐに呼び戻せばよい。連れ戻す方法もなんとかなるであろう。」
「だが我が主、我が唯一の万物の王を認識させるタイミングを逸してしまった。とりあえず追いかけるが、いいだろうな?」
「好きにするが良い。あれもお主に簡単にどうこうできる存在でもあるまい。お前もクトゥルーを滅するようなことはすまいて。」
「貴重な戦力には違いないからな。そう簡単に滅ぼしたりはせん。但し、我が主を認めない、というのであれば別だがな。」
「それほど馬鹿でもあるまい。」
「そうだといいが。」
ナイアルラトホテップは直ぐにクトゥルーを追うのだった。




