序章 第21話 シュブ=ニグラス④
しかしシュブ=ニグラスも唯々諾々と従う気はない。あわよくばヨグ=ソトースを振り切り逃げる気でいる。ただ、ヨグ=ソトースの力も理解してきた。逃げるのは容易ではない。そして倒すのも難しい。
シュブ=ニグラスはただ放っておいて欲しかった。誰とも関わりたくなかったのだ。理由はない。ただ、ただ何にも干渉されたくなかっただけだ。
ヨグ=ソトースやナイアルラトホテップに目を付けられてしまい、その両者よりも強大なアザトースの配下になるよう強要される。自らにそんな運命が待ち構えていようとは思ってもなかった。
「シュブ=ニグラスよ、そろそろ諦めて我が軍門に降るがよい。」
降るが良い、と言われても、直ぐにはいそうですね、と応じる筈もない。自我の強さはヨグ=ソトースと変わらないのだ。
ちょうどその頃には、宇宙は恒星だけではなく惑星が出来始めていた。その一つにシュブ=ニグラスは降り立った。するとその星は生命であふれ出した。シュブ=ニグラスの力の一端だ。
生命であふれはしたが、知的生命体は生まれない。何かが邪魔をしているかのように全く生まれなかった。
「お前は生命を生み出せるのだな。」
ヨグ=ソトースは感心して言った。その一点では自らがシュブ=ニグラスに劣っていると思った。ヨグ=ソトースの力は破壊することに特化していたからだ。
「シュブ=ニグラスよ、我と契り、我の子を産むが良い。」
産むが良い、と言われても。そもそもシュブ=ニグラスは無から生命を生み出せる。ヨグ=ソトースの力を借りる必要はない。雌雄同体であり単独での出産も可能だった。
但し、シュブ=ニグラスも少し興味が出て来た。自らとヨグ=ソトースの力を併せ持った個体。それは一体どれほどのものになろうか。両者を超える者が生まれるのか。その時、ヨグ=ソトースはどうするのか。
「よかろう、契るが良い。」
シュブ=ニグラスは逃げるのを止め、ヨグ=ソトースの元に侍るのだった。




