序章 第19話 シュブ=ニグラス②
「やっと戻ったか。」
「そう言うな。なかなかこれで大変なのだ。」
「我を置いて話を進める出ない。それで、ここはどこなのじゃ?」
シュブ=ニグラスはナイアルラトホテップの強制的に連れて来られた場所を問う。
「ここはヨグ=ソトース、我の居城だ。お前の名は?」
「みんな名前を聞くのだな。まあよい、そちらから名乗ったのだ、我も名乗ろう。我が名はシュブ=ニグラス。」
「シュブ=ニグラスか、良い名だ。良い響きだ。」
「褒めてくれるのだな。それで、我は何故ここに連れて来られたのだ。」
「言っただろう、我の使命は我が主であるアザトースを万物の王として知らしめることだ。」
「それに何の意味がある?それと我がそのアザトースの元ではなくここに連れて来られた訳は何だ?」
それはそうだ。アザトースの元に連れて行けば話は早いはずだ。にも拘わらずナイアルラトホテップはシュブ=ニグラスをヨグ=ソトースの元に連れて来た。元々そういう話だったから、ということもある。
「我が王であるアザトースを万物の王として知らしめるためにその配下である我、ヨグ=ソトースが全てを支配するのだ。」
「全て?」
「そうだ、全てだ。この宇宙のありとあらゆるものを我が支配し我が王であるアザトースの前に全てが平伏すのだ。」
「それがそなたの望んだことなのか?」
「そうだ。ナイアルラトホテップと共にそれを実行するのだ。」
「ならば何も言うまい。ただ、ナイアルラトホテップよ、ヨグ=ソトースよ、我に強いるな。我は放っさておいて欲しいだけなのじゃ。」
シュブ=ニグラスは繰り返し懇願した。二人を前に自由を得られるとは思わなかった。各々の力は拮抗しているように感じる。しかし両方を相手に逃げ切ることは敵わないだろう。それくらいのことは判る。それでも自由意志ではないことを強いられるのは肯んじなかったのだ。




