序章 第15話 ヨグ=ソトース⑥
「彼の者は温度を自由に上げたり下げたり出来る。超高温で熱せられた後に超低温に下げられると、若しくはその逆であっても、我とはいえど動きが止まらざるを得ない。まあ少しすると動けるようにはなるのだが。」
ナイアルラトホテップが動けないうちにクトゥグアがさらに超高温・超低温を繰り返すのだ。するとずっと動けなくなってしまう。これを数万年続けられてしまったというのだ。
「それでよくクトゥグアとやらを制することに成功したものだな。」
「相手の能力の真逆を寸分の違いなく全く同じ力で返すことが出来るようになるまで時間がかかってしまったのだ。全てを相殺できるようになると動きが止らなくなった。それを何度も何度も繰り返すとクトゥグアはしびれを切らして我の話を聞くようになったのだ。我はただ我が主が唯一の王だと知らしめることが目的なのだということを。」
「それを知らしめることがそれほど重要な事なのか。」
「我が主の最初の下知である。疎かにしていい訳があるまい。」
「それで、そのクトゥグアとやらはお主の主を自らの王と認めたのか。」
「そうだ。俺が主と認める存在に興味が出たようだ。お主もそうであろう。」
「そうだな。お前が認めるのであれば、という気持ちはある。我もお前の力はある程度認めておるでな。」
「ある程度、な。クトゥグアも似たようなことを言っておったわ。我が主のことは認めるがお前のことは同格、若しくは自分の方が上位格だと。我にとってはどうでもいいことだがな。」
「お前もクトゥグアも我も、存在としては唯一無二であろうが、少し考え方、感じ方は似ておるようだな。」
「そういうものか。」
「まあ、よい。それでお前の主にはいつ会わせてくれるのだ。」
「今、すぐだ。」
ヨグ=ソトースとナイアルラトホテップは時空を超えてアザトースの玉座へと飛ぶのだった。




