序章 第11話 ヨグ=ソトース②
「お前に付き合う理由は我にはないな。」
そう言うとヨグ=ソトースは別の次元に逃れた。
「無駄だ。どこまでも追うぞ。」
ナイアルラトホテップという、その初めて見た自ら以外の存在は容易に追いついてきた。逃れた次元を探し出すのさえ困難なはずだった。ヨグ=ソトースも特に意識をして次元を選んだわけではない。通常11ある次元を適当に渡っただけだったにもかかわらず、だ。自分と同等の能力をこの者は備えているのか。それだけでも、まあ、話を聞いてやる理由にはなるかも知れない。
何回か次元転移を繰り返したが、はやり容易に追いついてくる。何か目印でもあるかのようだ。そもそも次元転移能力は固有の物ではなかったのか。初めて出会う他者であったので、よく判らなかった。
時間を遡ってもみた。当然のように付いてくる。この者はやはり自分と同等の力を持ち合わせていると思われる。
それが、ただの使者だと?自らの主が万物の王だと知らしめるために我を訪ねてきたというのか。我をその力でねじ伏せようと。
違うな。この者からはそのような不遜な考えは漏れ聞こえてはこない。本当に自らが王と崇める存在を、全ての存在に知らしめたい、ということが望みのようだ。
様々な次元、時間を飛翔しながらヨグ=ソトースはそんなことを考えていた。少しナイアルラトホテップという存在に興味が出だしていた。初めて出会った他者ということも含めて、その主とやらにも会ってみたい、と思った。
ただ、その意を汲んでナイアルラトホテップの言う主の配下に簡単になる気もなかった。ヨグ=ソトースとナイアルラトホテップの追いかけっこは数万年続くのだった。




