プロローグ
「ここに、アイーダ・システィン侯爵令嬢を今代の聖女とすることを宣言する!」
選ばれたのは、私の隣の少女だった。宣言と同時に少女の頭上には、七色の光輪が現れた。
──ああ。私は、また特別になれなかったの。
聖女。清らかなる乙女。その力で、多くの民を癒すのだという奇跡の体現者。
どうしても、私は聖女になりたかった。聖女になれば、誰かの特別になれると思ったから。そんな卑しい気持ちで試験に挑んだのがいけなかったのかもしれない。
「シエンナ・マドリー公爵令嬢、あなたはとても優秀でした」
優秀な成績を修めた。だって、聖女になるために。そのために私は頑張ったのだから。
……でも。
「どうか、そのお力で聖女様をお助けください」
それは、飼い殺しの宣言だった。私を聖女のスペアにすると。
「……わかりました」
私は笑みを形作った。そのことに、周囲はほっとしたように息つく。だったら。特別になれない私のまま、飼い殺しにされるくらいなら。
私は駆け出した。
急な私の行動に誰も反応できなかった。
神殿の最上階から飛び落ちる。今度こそ、誰かの特別になれる私になりたいと願いながら。