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本当の恋人みたいなデート


 リアムが、

 「むかえにきたよ」

 トントン、とドアをノックし開けてくれる。 


 

 私は、ずっとソワソワして待っていたのだけど、リアムの顔を見たらすっごく緊張してきた。


 いつも見ていて、ドキドキしてるんだけども、

 (できる限り平常心してるんだけど)

 デートだと思ったら本当にダメだ。


 「は、はい」とか他人行儀に言ってしまったかも。


 リアムはいつも制服以外でも、小綺麗な格好をしているが、今日はさらにいつもより洗練された感じがする。


 入学式のワンピースを少し刺繍でリメイクしたのがなんだか恥ずかしくなってきた。


 でも、リアムが

 「すごくオシャレしてる! 可愛い」

 と言ってくれたのでお世辞かもだけど、とっても嬉しくなってしまった。


 ……リアム、ありがとう。


 「リアムもとっても素敵。いつも素敵だけど」

 私がそういうと、優しくわらってくれて、

 嬉しい気持ちになる。


 「今日は俺のプランに任せてもらっていいかな?」

 「ぜひ!」

 プラン考えてくれてたんだ! 嬉しい。


 「まずは……」

 まさかの、服屋さんだった!

 しかも、例の全く手が出なかった値段のところよりもさらに高価なところで。


 「本当はセレーナの今日着てるワンピースに似てる服が飾られてるお店に行こうと思ったんだけど、セレーナの今の服の方がとっても似合ってるから、やっぱりここにしたんだ。それさ、入学式のきてた服でしょ? すごく似合ってる。本当にセレーナは器用だなぁ」

 なんて言ってくれて、リアムは良く覚えてくれているなぁと感心する。


 でも、その高価な服屋さん、値札がなくて。


 「リアムこのお店、値札がないわ……早く帰りましょう?」

 「値段は気にしなくていいから好きなの選んで」


 なんて言ってくれるけど流石に値段が書いてないのを選ぶことなんてできなくて、

 「ご、ごめんなさい。ちょっと私には高価すぎるから……」

 「セレーナには安すぎるくらいだと思うけどなぁ」

 「お気持ちだけありがたく受け取らせて」


 「しょうがないな。お店の人に選んでもらおう。すみません。彼女に似合うワンピースを3着ほど見繕ってもらえるかな?」


 「ええっ」

 あれよあれよと選ばれて。

 その中でも特に素敵な紺色ので、金色の刺繍が美しいワンピースに着替えさせてもらって。


 ……鏡で見たら、どこぞの御令嬢かと思うくらいの女の子が、そこにいた。


 「私が? 信じられない……」


 店員さんが

 「とても似合いますね」

 とおっしゃった。


 こんな高価なものいいのかしらと思うが、リアムが満更でもなさそうで。


 「お会計はいつものようにさせていただきますね」

 店員さんがそうおっしゃって。


 リアムが私とは遠い世界の人だって少し思わされた。


 うん、でも今日はめいっぱい楽しむ、って決めたから、そういうの考えないって決めたんだ。


 そのあとは、とても素敵なカフェに連れてってくれて。


 クラスメイトの女の子たちが、カフェテリアで、新作の苺のナポレオンパイが絶品で! って騒いでた例のナポレオンパイを頼んでくれた。


 本当に切るのがもったいないくらい美しく、イチゴも、生クリームも、バニラビーンズが入ったカスタードクリームも、全ておいしい。


 「こんなにおいしいの、初めて食べたわ……幸せだわ」

 「それはよかった」

 リアムが微笑んでくれる。


 パイ生地がサックサクで、ナイフとフォークでカットするのだけど、ちょっと難しい。

 クラスメイトはどうやって食べてるのかしら。 

 ご令嬢の皆様はやはりマナーをしっかり習っていらっしゃるから美しいのだろうな。


 リアムはすごく上手に食べていて。

 「リアムはこういうの食べるときも綺麗に食べるのね」

と言っても、

 「普通だよ」なんて言う。


 なんだか、自分との差を見せつけられちゃうなぁ。


 でも、とても幸せだ。

 リアム、のおかげだ。


 そのあと、公園に行った。

 私はこの街の薬局でアルバイトしていて頻繁にきていたけど、公園には来たことがなかった。


 夕暮れに恋人たちがいてベンチに座って幸せそうで。


 ふと、私たちも本当の恋人に見えるのかな?って思ったら、なんだか緊張してきてしまった。


 「セレーナ、緊張してる?」

 リアムには、やっぱりすぐ気づかれてしまう。


 「ええ。甘い空気になんだか緊張しちゃって……」

 「俺たちも恋人に見えてると思うよ」

 リアムが微笑む。


 「私には勿体無いことだわ」

 リアムは私の手を取り、ベンチに座らせてくれた。

 ベンチなのに、エスコートしてもらうみたいにスマートで、とってもドキドキしてしまう。


 「あっあの。リアム、今日は本当にありがとう。私のためにこんな素敵なデートをしてくれて。リアムのお願いなのに、私ばかり幸せで。あの、それで……」

 私はカバンからプレゼントのネクタイピンの包みを取り出して、

 「よかったら、受け取ってくれませんか」とリアムに渡した。


 リアムは目を丸くして、

 「昨日、秘密って言ってたのもしかして?」

 と言うので、

 「うん、昨日お店に入ったら、これがとても素敵で、リアムにプレゼントしたいな、って思ったの。気にいってもらえると嬉しいな」

 「開けていい?」

 「もちろん!」


 リアムは丁寧に包装を開けてくれる。

 ネクタイピンは、やはりあのとき見て思った通り、とてもリアムに似合っていた。


 「素敵だ。とっても気に入ったよ」

 リアムはそう言ってくれて、

 今つけているネクタイピンをはずし、つけてくれた。

 制服には合うだろうと思っていたが、今日着ている服にもとても似合ってドキドキしてしまう。


 「とてもよく似合うわ」

 「ありがとう」

 リアムが本当に嬉しそうで、プレゼントできて、本当によかった。


 そのあと私たちは、入学したての頃のお話など、懐かしいお話や、最近のたわいない話で盛り上がった。


 こんな素敵な時間、ずっと続けばいいのに……。


 「ねぇ、今週末、アルバートン家にいくんだよね?」

 ふとリアムが真面目なトーンで言った。

 「ええ。そうだけど」

 「とりあえず、うまく選べないと言って引き伸ばすんだ。まだ断らないようにしてほしい。もちろん、どちらかを選んでもいけないよ」

 真剣な顔でそういう。

 

 「私、お断りしようと思っていたんだけど」

 「まだ待って、何か本当に裏がありそうなんだ。本当はついていってあげたいけど。代わりにこれ」


 リアムの手には素敵なネックレスがあった。


 「可愛い……」

 「これ、ずっと身につけておいて。きっとセレーナを、守ってくれるはずだから」


 「わかったわ」

 私は頷いた。


 「そろそろ夕食の時間だから、帰ろうか」

 「ええ、こんな素敵な格好していたら、びっくりされてしまうから、いつもの部屋着に着替えるわね」

 「俺はそんなセレーナをみんなに見せびらかしたいんだけど……」

 「ええっ?」

 「みんな可愛いっていうと思うよ」


 実際、みんなに見せると、みんな本当に褒めてくれ、サラさんなんて泣いてしまう始末だった。


 私は本当に幸せものだ。


 だが、週末のことを思うと、私はとても気が重かったのだ。

セレーナちゃんが幸せそうで寮の皆も嬉しかったようです

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