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もう甘えないでいたいのだけど

 

 自分でも呆れるくらい、情緒不安定な私は、ひとしきり泣いて、シャワーを浴びた。


 シャワーを浴びて、心からスッキリ! とはいかないけれど、多少はスッキリする。


 男性が男性の釣書を貸してくれなんていうシチュエーションなんて良くわからないけど。


 その人にはもうすでにいい人がいて、自分のものを準備するために参考にしたいという以外、考えられないと思ってしまう。


 いや、私は確かにリアムに甘えすぎていたかもしれない。

 彼から自立するいい機会なのかもしれない。


 人間っていうのはすぐ楽な方に流される生き物だから、しょうがないよね。

 リアムに甘えまくっていた自分は許してあげよう。

 そして、これから自立に向けて頑張ればいい。


 まず朝食を取る時間をいつもより早くしよう。

 そしたらリアムに会わないだろうしね。


 と思っていたのに疲労感からか、泣きすぎたからか、いつも通りに起きてしまった私だった。


 泣きすぎて腫れた顔……。

 今日の授業はもう出たくないな、って一瞬思ってしまったけど、特待生で通わせていただいている身、授業は無理をしてでも出ないといけないものだ。


 そうだ、私はいい思いつきをする。

 こないだの寮の催しで、オシャレ用の伊達メガネをもらったんだったわ。


 みんなには結構似合うって言われたんだけど、リアムだけはそれ絶対つけて学園にいかないで、似合わないよって言われたのよね。


 どうしよう、でも目は誤魔化したい。

 まぁ、リアムにはいい人がいらっしゃるみないなんだから、似合わないと思われていても、もう構わないんじゃないかな?


 似合わないよ、って言われた言葉がリフレインする。


 やっぱりやめようかな……。

 さすがにまだリアムが好きなので、似合わないとと思われていいわけないとも思ってしまう。


 悩みに悩んで、私はもうリアムから自立するんだ、自立の第一歩なんだと思って、かけることにした。


 メガネをかけてみると、泣いた目も誤魔化すことができたし、やっぱりリアム以外の人に言われた通り、自分にとってもよく似合って、色気のない自分にも色気がでるような気さえする。


 食堂へ向かう。

 ほんの少しだが、いつもより早くいけたので、食堂にはまだリアムはきていなかった。


 「おはようございます。昨日はありがとうございました」

 サラさんはとても手際良く色々動きながら寮生みんなの朝食を用意している。

 「おはよう!  セレーナおつかれさまだったね。また遅くなるようなら準備しておくからいつでもいうのよ」

 「ありがとうございます!」


 結局私、リアム以外にもよくしてもらってる。


 リアムのおかげなのは間違いないけど。

 私だけなら気付かれずぺこぺこだったと思う。


 朝食を受け取り、一人で隅の方でいただきますしていると、

 「おはよう!」

 特待生で同級生のロージーが声をかけてくれる。


 「隣に座ってもいいかな? こないだのメガネようやくかけてくれたの! やっぱり似合ってる! 超可愛い」

 すごく褒めてくれる。


 「ロージー、ありがとう!  昨日実は悲しい本読んじゃって泣いて目が腫れてて。誤魔化してるの」

 なんて適当な言い訳をしておく。


 「わかる!  私も悲しい本読んだら泣いちゃうんだよね。まぁ、物語の本はほとんど読まないけど! アハハ!」

 ロージーはいつも明るくて私は元気づけられる。


 そうこうしていたら、あっという間にリアムも食堂へ来た。

 私、リアムにすぐ反応してしまう。

 リアムセンサーでもあるのかな……。


 リアムはメガネに気づくかな? ドキドキしてきちゃった。

 駄目って言われてたのにかけてるから、すごく悪いことしてる気分。


 リアムはサラさんに挨拶し私の軽食のお礼までそつなくこなすと、朝食を受け取りすぐにこちらへ向かってきた。


 リアムはこちらにくるや否や、

 「セレーナ。メガネ似合ってないっていったよね」

 そんなことをサラリと言う。


 「泣いちゃって、目が腫れてるの。今日は似合わなくてもつけていこうと思うわ」

 私は動揺を見せたくなくて、淡々と言う。


 リアムは大きなため息をついて、もう何も言わず黙々朝食を食べ出した。


 私が少し悲しくなってしまった。


 すると、ロージーが、

 「似合うと思うけど! エロカワいい感じで!」

 なんてあっけらかんに言ってくれる。


 ロージー優しい。

 そんないい風に言ってくれるなんて嬉しい!


 「ロージー、ありがとう……」

 「本当のことだからね! リアムはセレーナのこと心配になるのね。そのメガネかけると更にセレーナが可愛くなっちゃうもんねー」

 「まぁロージーったら! 本当に面白いわね!」

 ロージーはいつも冗談を言ってみんなを明るくしてくれるんだ。

 「……」

 ロージーが、リアムを見て、何故だか残念そうな顔をしている。

 ……どういうことかしら?


 リアムはそれには何も言わなくて何か怖いけど。

 顔が少し赤いような気もするけど。


 私は、結局リアムより先に来たというのに、何故か調子が悪くて朝食が進まなかった。

 昨日夜ご飯が遅かったのもあるかも。


 私はお持ち帰りするランチボックスを貸してもらおうと立ち上がった瞬間立ちくらみを起こしてしまう。

 (昨日泣きすぎたからか、慣れないメガネからか)

 まさかのリアムに抱き止められるという失態まで犯してしまった。


 リアムはすぐさま、まだクラクラしてる私を椅子に座らせて、自分と私のお盆を返却してくれる。

 「……ありがとう」

 どんどん気分が悪くなってきて、喋るのもつらい。


 よくよく見たら私の分はまたランチボックスにしてもらってるし、リアムは本当に優しい。


 ロージーは先に行ってるね、とそそくさと食堂を出ていった。


 どうにかちょっとマシになったので、立ち上がる。


 だがやはり目眩がするので、テーブルに手をついて倒れないようにする。

 昨日やはり泣きすぎたな? 疲労がすごい。


 昨日、リアムにいい人がいるって思ったら余計に泣けてきてしまって、またなかなか寝付けなかったんだ。


 自立するって決めたのに。


 速攻でグダグダしている自分に嫌気がする。

 でもリアムに優しくしてもらうことを喜んでいる自分もいる。


 ダメダメ! 頑張らねば!


 そんな決意もむなしく、

 「歩けるから」

 と言うのに、さっさと私を抱き上げ、リアムは部屋に連れて帰ってくれた。


 「今日は休んだ方がいいと思う。目も腫れてるし、ご飯も食べられてないし、フラフラじゃないか。わざわざメガネはしなくていいよ。似合う人にでもあげるから」


 似合う人を知っているのかも? と思ったらまた泣けてきて。

 「でも授業うけないとわからなくなっちゃうから」

 泣かないと決めたのに、瞳からボロボロ涙が溢れてくる。

 何が悲しいというのか、私は。


 昨日から泣きっぱなしで、こんな状態だったら、きっと優しいリアムでも面倒くさくなって離れてくれるに違いないよね。


 よくないけど、よかった、よね。


 「リアムお願い。メガネ返して。似合ってないのわかってるけど授業がどうしてもうけたいの」

 あふれる涙をハンカチで拭きながら、お願いする。


 「セレーナ、お願いだから泣かないで。でも、今日は絶対いかせない。授業なら、俺が教えてあげるから。今行っても集中できなくて聞いてないのと一緒だよ、いいね」

 本当にごもっともなので何も言えない。


 メガネは結局没収されたが、私はベッドに寝かせられて、コレで冷やしなよって目を冷やす濡れタオルまで用意してくれた。


 メガネ、よっぽどに似合う人がいるのかもしれない。


 「当分薬局も先生に言ってお休みにしてもらったからね」


 いつのまにそんな話をしてくれたんだろう。

 あてにしてたお給料がなくなるのは痛いが、二人を選ばないといけないことになっている今は、むしろ好都合かもしれない。


 「あ、コレもう返しておくね」

 リアムは貸していた釣書を机においた。


 なんだか結局、またリアムに甘えてしまっただけの私だった。

双子さんでてこれなかったです。長くなりました。

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