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アーサー様は思ったより優しい方だった


 私は、アルバートン伯爵家の前にいた。


 前回お伺いしたときの服装はアルバイト先の薬局の制服だったが、今日はリアムに買っていただいた素敵なワンピースを着ている。

 3着のうちの、クリーム色のワンピースで、これもお気に入りなのだ。


 学園の制服でいこうかと思ったのだが、リアムにいただいたワンピースの方が、リアムを感じられて安心できるかもしれないと選んだのだ。


 デートもしておいて今更なのだけど、眼鏡美女さんには本当申し訳ないと思っているのだが。


 そして、もちろんリアムにいただいたネックレスもしている。

 不安だが、やはり何もないよりとても安心する。


 門扉の前に立ち、インターホンを鳴らすと、前回お薬をもってきた時もそうだったのだが、執事のような人が出てきて、

 「お待ち申し上げておりました」

 なんておっしゃった。


 「セレーナ・ティスデイルでございます」


 「どうぞこちらへ」

 とまたあの絢爛豪華な応接室へと通され、執事の方に、お二人の釣書をお返しする。

 ようやく返せて安心した。


 すでにアルバートン伯爵様と、アーサー様とライアン様が座っていらっしゃった。


 本日は、伯爵夫人様もいらっしゃる。

 どうやら伯爵様に似ているのがライアン様で、伯爵夫人様の方はアーサー様に似ているな、と思う。


 女性もいて少し安心するが、初めてお会いするのでやはり緊張する。


 「本日はお招きいただきましてありがとうございます」

 で、合ってるかしら?

 リアムにマナーを習えばよかったと思うものの、後の祭りだ。


 「それでセレーナさんはどちらにするか決めたかな?」

 伯爵様は、そうにこやかにおっしゃった。


 薬局にいらっしゃる優しいおじさまのままで、なんだかほっとする。


 リアムの言った通りに、

 「あの……。私がお二人を選ばせていただくなんて、勿体ないことでございます。お二人とも本当に素敵な方なので、とても難しく選べませんでした。本当に申し訳ありません」

 と、そう言った。


 「そうか。たしかに、難しかったかな」

 伯爵夫人様も

 「アーサーもライアンも自慢の息子だもの、それは難しいわよね」

 とおっしゃってくださって、この場をうまく切り抜けられたことにとても安心する。


 「では、もう少し待とうか。今日はこの後、アーサーとライアンと一人ずつ過ごしてくれないかな?」


 「承知いたしました。この度は、私には勿体ないお話、ありがとうございます」

 ……うまく話せたかしら。


 まずはアーサー様と二人きりでお話することになった。

 寮に来てくださった時は、強引な方のイメージが強いので、少し緊張する。


 アーサー様は、私をテラスにお誘いくださった。


 きちんと手入れされた素敵なお庭の見えるテラスに私は通される。

 アフターヌーンティーやお茶菓子がたくさん用意される白い可愛いテーブルは、女の子の憧れみたいなもので。


 「うわぁ……!」

 田舎者なので、素敵なお庭にも、アフターヌーンティーセットにも、どちらも感激してしまう。


 「なんて素敵なお庭なのかしら……」

 ここが自分のお家だなんて、アーサー様はどんな気持ちでいらっしゃるのだろうか。


 「セレーナ、我が屋敷にようこそ。ここは俺の気に入ってる場所なんだ」

 そうおっしゃる。

 あまりに素敵なので、アーサー様が気に入られる理由はとてもわかる気がする。


 「アーサー様、本日はよろしくお願いいたします。先日は寮まで来てくださいまして、ありがとうございます」

 お庭に感激して、割と普通に話しかけててしまった。

 私はやはり危機管理能力が低いかも知れない。


 アーサー様は、寮の時の嫌なニヤニヤした感じではなく、

ブルーの瞳が優しく私を見てくれている。

 あの時の強引な感じは何だったのかしら?


 そして、アーサー様は、

 「……俺を選んでくれるとばかり思っていたが」

 そうおっしゃった。


 「申し訳ありません。本当にどうしたらいいのかわかりませんでした。まだ嘘なのじゃないかと思っているくらいです。何かの間違いではないのですか?」

 つい普通に聞いてしまった。


 「私、お聞きしました。お二人のどちらかが、第二王女様とご婚約なさるお話。そもそも、第二王女様がお選びになるんじゃなくて、私が選ぶお話になっているのが全くわからないんです」

 素直に聞く。本当に不思議だ。


 そういえば、アイザック様はお二人に伝えてないのだろうか。

 そういえば、私断るってはっきりアイザック様には伝えたんだ。

 お二人に伝えてくださっていたら、話は早いのだけど……。

 とりあえず、アーサー様の動向を見守るしかない。


 「第二王女のことは気にしないでくれ。俺が婚約したいのは、セレーナなんだ。ずっと君が気になっていた」

 アーサー様は、そんなことをおっしゃった。


 「気にしないでと言われましても、第二王女様と、平民の私では比べようもないと思うのですが……。アーサー様はお優しいのですね。そんなふうに言ってくださるなんて。もしかして、何か理由がおありなのですか?  私、平民で何もしがらみがありませんから、もしよろしかったら、このお話をお断りいたしますわ」

 私はそう言った。

 この流れでうまく断れるかもしれないと思うと嬉しくなってしまう。


 アーサー様は、思った以上に強引な方ではなく、私のために優しい嘘をつける方だったのね。

 本当に何か理由があるのかもしれない。


 全くお会いすることもないような、隣のクラスの平民の私を気になることがあるわけないのに。


 アーサー様がすごく残念な顔をしているような気がするが、私はうまく断れそうな予感に、少し、いやかなり安心してしまっていて、それには全く気づかなかった。

双子の本当の狙いはなんでしょうか…

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