ヒロインは処刑されました。~ 婚約破棄のその後で ~
「マリアぁぁぁぁぁ!!!」
壇上で第一王子が手を伸ばしますが、兵士に斬られた少女は血飛沫を上げながら倒れゆきます。
ごきげんよう、私アーツ子爵家のカレン=アーツと申します。
先程第一王子殿下が卒業記念パーティーの開会宣言をなされたところ、兵士によってマリア嬢が処刑なされたところですわ。
え、意味がわからないって?ま、ま、順を追って説明しますから。
この日は栄えある王国立ミリティア学院高等部の卒業日でして、今まさにその卒業記念パーティーが行われようとしていたのです。
私たち卒業生及び父兄らのが見守る中で第一王子殿下がフラウン男爵家のマリア=フラウン令嬢を伴って壇上に現れたのです。
この国では家族、婚約者、あるいは王家の認めた者以外が公の場で王族に触れると問答無用で死刑となります。
誤解無きよう言っておきますが、マリア嬢は殿下の婚約者ではございませんよ。その為マリア嬢は兵士に斬られたのです。
え、王子が許してるのになんで処罰されてるのかって?いやあなた鋭いですね♪
この国では王子は王族であって王家ではないのです。
まずはこの国の爵位から説明させていただきますが、上から……
王族である王家、王爵……
上位貴族の公爵、侯爵、伯爵……
下位貴族の子爵、男爵、騎士爵……
そして平民とあります。
王家とは、国王、王配(正配、正妃、王妃とも言う)、王太子のみを言い、先王と王子(と王女)とそれぞれの配偶者、そして側王配(側妃とも言う)は王爵になります。
王子(と王女)は王太子が即位する際に成人していれば配偶者と共に臣籍降下し、未成年であれば成人するまで王爵です。
え、第一王子は王家じゃないのかって?いや殿下はまだ立太子してないんですよ、馬鹿だからw
なぜこのような法があるのかと言うと、数代前の王太子が魔女と呼ばれた貴族令嬢に触れることで発動する魅了魔法を使われました。
魅了前の彼は誰もが賢王となり王国を大きく発展させてくれると期待された麒麟児だったのです。しかし婚約者を罠に嵌めたり、散財により国の資産を枯渇させる等で王国は大混乱に陥りました。
廃嫡された彼は死ぬまで魅了が解けなかったそうです。
実例として過去に当時の王子が街中で貴族に触れたことでその場で切り捨てられたことがあります。その様な事例を防ぐ為、王族の移動には近衛騎士を帯同するのです。
このことは中・高等部に入試問題にあり、正答できないと入学が認められないはずなのですが……。
学院内には近衛騎士が入る度に手続きが必要となりますが、公の場ではないので問題になりませんでした。しかし卒業記念パーティーの場は学院の施設を借りているとは言え、開会した以上は公の場となります。
故に殿下がマリア嬢を伴って入場した時点では見過ごされましたが、殿下の開会宣言と共に処刑対象となりました。ここで処刑しないと兵士さんが処罰されますからね。
知らなかったとは言わせませんよ、入試のことももちろんですが、あれだけ婚約者だったミリアリア様が繰り返し忠告なされましたのに。
「知らんぞ、私はそんなの知らんぞ!」
えっ!?