67話 ギルドマスターとの決着
投稿遅くなってしまいすいません。
「発動,炎神」
部屋が明るく照らされた。
「へー。それが君の本気? 面白いね」
俺は一気に畳みかける。
炎神の俺はたとえ人間形態でも,龍の時の100分の1の力を出すことができる。
つまり,すべての能力値でニアを圧倒できるというわけだ。
俺が気を付けなくてはならないのはニアの持つアンチ魔法の効果だけ。
それさえ気を付ければ俺が負ける要因は全くない。
まずは一気に接近する。
そしてそのまま思いっきり殴った。
思った通り,ニアは俺の攻撃に反応できていないようだ。
だがそこは剣士の勘なのか,剣で俺の攻撃をガードした。
もしそれがなかったらこの時点で俺の勝ちになっていただろう。
俺のこぶしを,炎を防ぎきれなかったニアは一気に吹っ飛ばされる。
そしてこの部屋の端に衝突する。
だが,ここで見逃す俺ではない。
早速追撃の用意をする。
さあ,ここで決めるぞ。
「第八術式 炎龍降臨」
俺がそう唱えた瞬間,俺の前に魔法陣が発生する。
その中から出てきたのは巨大な炎龍。
そしてそれは飛翔すると,一気にニアの方に飛んで行った。
そのまま体当たりをする。
全身が炎でできているこの炎龍に体当たりをされたらひとたまりもないだろう。
そして,爆発が起こった。
ふう,これでやっと終わりか。
だが強かったな。敵ながらあっぱれだ。
俺が部屋を出ようとしたとき
「まだだ」
「は?」
「まだ僕は負けていない」
おいおいおい。
まさかあの攻撃を食らって,まだ意識があるとでも言うのかよ。
俺は急いで後ろを振り返る。
そこには・・・
真っ赤な角をはやし,日本の剣を持ったニアが立っていた。
まじかよ。
あいつまだ戦えるのか。
それに,なんだあの角は。
(あの角は鬼族特有のものだと思われます)
鬼族?
それはなんだ。
(鬼族とはその名の通り鬼の血を持つ種族のことです。しかし鬼族なら常に角が出ているはずですが)
そうか。
つまりあいつは異例ってわけだな。
あいつに関して疑問は尽きないが,とりあえず集中だ。
あいつ今にも襲い掛かってきそうな感じがするからな。
俺があいつを見た,その瞬間,またしてもニアが消えた。
またか。
俺は急いであいつから距離を取ろうとする。
だが,気づいた時にはもう手遅れだった。
いつの間にかニアが俺の背後にいる。
っ。
下がろうとしていた俺は回避が間に合わない。
だがここで致命傷を負うわけにはいかない。
俺は俺を中心に,爆発を引き起こした。
ズドーン。
そしてそれにもひるまないニアの剣が俺に近づく
だがそこにはもう俺は居ない。
爆発によって作られた時間で退避に成功していた。
そして俺は離れたまま炎魔法を連続して発動させる。
「第二術式 フレイムランス」
「第八術式 灼熱の息吹」
「第六術式 火の海」
これでハチの巣だ。
だが,その魔法たちがニアに届いた瞬間,
キンッ。
という甲高い音が聞こえる。
見ると,俺の魔法がニアの剣によって切り裂かれていた。
なんて速度だ。
この感覚で発射された魔法群を全て切り刻むとは。
最初なんかフレイムランスだけでも対処できていなかったのに。
俺の魔法を完全に破壊してしまうと,ニアはかなりの速度で近づいてきた。
反撃だ。
そう直感した俺は奥の手を使うことを決める。
「発動,竜人化」
俺がその魔法を唱えた瞬間,俺の体を鱗が覆い,さらには頭に角が生えた。
そして何より自身の戦闘能力が大幅に上がったのを感じる。
それのもそのはず。この魔法は本来の姿に近いまでの能力を発揮できるのだから。
ニアが接近してくる。
俺はあえてニアとの距離を詰めると,殴った。
だがそれは剣ではじかれる。
今の俺のこぶしの硬度は剣と同じくらいだ。
だがアンチ魔法の効果で俺を覆う結界が破れていく。
俺は一瞬の間に何度も殴る。
だがそのすべてはニアの二つの剣ではじかれてしまう。
俺の結界はどんどん破れていった。
チッ。
俺は舌打ちをすると,距離を取る。
そして,足に力を入れるとまた接近した。
ニアも負けじと近づいてくる。
そしてこぶしと剣が重なった。
そのたびに
ガン,ガン,ガン
と音が響く。
また離れては近づき,離れては近づく。
埒が明かない。
そう思った俺は,少しフェイクを入れてみる。
俺は先ほどと同様に近づき,殴るふりをした。
それを見たニアは剣を振る。
だがそこには俺のこぶしはない。
引っかかったな。
俺は一歩近づくと,一気にカウンターを食らわせる。
炎神の効果と合わさった俺のこぶしは,ニアを吹っ飛ばせるのには十分すぎた。
さあ,そろそろこの戦いに終わりを告げよう。
「第八裏術式 覇王龍降臨」
さっきと同じように召喚魔法が発生する。
だがなかから出てくるの存在はけた違いだ。
そこから出てきたのは覇王龍。この世界の覇者と言わんばかりの力を秘めたその龍は,目の前の少女を敵と認識する。
そして,覇王龍がニアを飲み込む。
目の前で大爆発が起こった。
さて,生きているかな。
俺は恐る恐るニアがいた場所を見る。
そこにはニアがしっかりと生きていた。
俺が助けようか迷っていたとき,
「お見事です」
そんな声が聞こえてきた。
「だ,誰だ」
俺はそう怒鳴る。
だがそれほどまでにこいつは恐ろしい。
なぜなら俺が気配を全く感じなかったのだ。
こいつは,できるやつだな。
すると,ドアが開き,一人の女の人が入ってきた。
「誰だよ」
「私はギルド副総括マスター,キャルロットです。以後お見知りおきを」
「そうか。なら今の状況についておしえてくれるんだな」
「それはできませんね。今回の件は,総括マスターが勝手にやったことですから」
「は? 勝手に戦闘しといてこれか? 俺は死ぬ可能性があったんだぞ」
「その可能性はないですね」
「なぜわかる」
「だって,あなたは竜王決定戦の優勝候補でしょう」
なにっ。
なぜこいつは竜王決定戦のことを知ってやがるんだ。
「驚いたような顔をしていますね」
「お前はなぜ知っている」
「こういえばわかりますか? 私が前竜王幹部だったと」
なっ。
俺は距離を取る。
「だから,私が君に危害を加えることはないと言っただろう」
じゃあなんでここにいるんだ?
だが俺は次の言葉で納得する。
「竜王決定戦の日時が決まりました」
「なんだと」
「二か月後です」
二か月もあるのか。
だが,出場者の中には遠いところに住んでいるような人もいるもんな。
当たり前と言っちゃ当たり前だな。
「分かった。それだけか」
「はい,それだけです。しいて言うならこの少女は私は連れて帰りましょう」
「助かる」
そして俺はニアを介抱するキャルロットを見ながら,ふと考える。
どこかがおかしいと。
(弘樹,なんでドアが開いたのにカウラたちは入ってこないのでしょうか)
ふいにシーがそんなことを言ってきた。
それだっ。
カウラと咲はどこに行った。
俺はキャルロットに聞く。
「誰ですか,その人たち」
だが知らないらしい。
俺は急いで部屋から出る。
もちろんそこには誰もいない。
「どこにいったんだ」
そしてその瞬間,門番が走ってきた。それも彼の顔は真っ青だ。
「おい,どうしたんだ」
「た,大変です。魔王が,魔王が攻めてきました」
なんだと。