055話 魔物を売り払った件
投稿遅くなってしまいすいません。
これからはもう少し短いスパンで投稿できるように頑張ります。
「のう,ヒロキよ。この後どうするのじゃ」
今俺は「とんがりの里」でフォールフィーと話している。さっき聞いたところによると,フォールフィーは町の近くの魔物を倒した後,近くの森の魔物を根こそぎ倒してきたそうだ。
まったく,やっぱり騎士団が言っていた,あの異常気象はこいつの仕業だったのか。
で,これからどうするか,か。
「とりあえずは冒険者ギルドというところに行こうと思うんだけど」
「冒険者ギルドじゃな。分かったのじゃ」
そういうとフォールフィーはステーキを口へ運ぶ。そして顔がとろけたようになる。どうやらよっぽどおいしかったらしい。
さて,フォールフィーが食べ終わったら出発するか。
ちなみに俺はもう昼ご飯を済ませてある。というよりフォールフィーが五皿目なのでとっくに食べ終わっていると言った方が正しいか。
そして食べ終わると俺は代金を払って外に出た。そしてこのまたこの街の中心に向かう。冒険者ギルドにむかうためだ。
カランカラン。
そんな心地いい音とともに俺はギルドに入る。一瞬だけそこにいたみんなから目線を感じたが,すぐにそれもなくなった。
フォールフィーはあたりを見回している。どうやら新しい環境に興味津々なようだ。
そして俺はカウンターへ向かう。フォールフィーもついてきてくれている。
もともと俺は依頼書を何枚か発注したいとおもっていたのだが,騎士たちに呼び止められたのでできなかった。
買取価格は落ちてしまうがそれはしょうがないだろう。それにフォールフィーの話だとかなりの数の魔物を狩ってきたことになる。
だとすると俺たちは根こそぎ魔物討伐系の依頼書を完了してしまうので他の冒険者の仕事がなくなってしまう。それは大問題なので控えるようにする。
俺もやっと高ランク冒険者らしく,後輩のことを考えられるようになったな。
さすが,俺。
そして俺たちはカウンターに着いた。そこにはなんとミューさんがいた。
「あ,お久しぶりです,ミューさん」
そう声をかけるとミューさんは驚いたように顔をハッとあげた。
「あら,ヒロキ君じゃないの。お久しぶりね」
「はい。というか職場に復帰されたんですね」
「そうなのよ。家にいてもやることがなくて困っちゃってね。でも,非常勤だけどね」
そうなのか。それに心なしかおなかも膨れている気がする。無理はしてくれないでほしいな。
「そういえばその子は誰かしら。この辺りでは見かけない顔だから違う町から来た冒険者さんかな?」
えっと,これはどうすればいいのだろう。本当のことを言うときっと問題だし,かといって,フォールフィーは冒険者証を作っていない。
俺がどういおうか悩んでいると,ミューさんは何かを察したのか,
「あら,言いにくいならいいわよ」
と言ってくれた。
そして,ミューさんは,キリっと気持ちを切り替えた。
「で,今日はどうのようなご用件かしら」
おお,さすがはプロだ。
「魔物の討伐をしたので,その売却に来ました」
「あら,そうですか。そういえばヒロキさんはAランク冒険者でいらっしゃいますよね」
「そうですが」
「では,裏の倉庫に行きましょうか」
もしかして,俺たちが大きい魔物を討伐してあるって思って気をきかせてくれたのかな。俺討伐してないからわからないけど,きっとフォールフィーは大型の魔物を倒してきてくれているだろう。
ミューさんがカウンターから出てギルドの中に意味ありげに置いてある扉をくぐる。
それはこのギルドの裏の倉庫に通じている扉だ。ギルドの中では大きすぎてどうしようもない時にそこに行く。
かくいう俺も大型の熊などの魔物を倒したときはそこを利用させてもらった。そしてそこに行くということは,冒険者の間では一種の憧れになっている。
そこに行ったやつらは大型の魔物を倒せるのだからすごい,みたいな感じだ。
これを聞いた時,俺は少しあきれたが,意外とこれはあたっていて,一般的に魔物は大きいほうが強いらしい。
例外もあるが,だいたいの魔物がそうなんだそうだ。全く,冒険者ギルドのシステムはあほに見えてどこか合理的だから侮れない。
俺たちはミューさんに続いてその扉に入っていく。
そして少し歩くと,そこにはいくつかの大きな倉庫があった。
ミューさんが迷わずそのうちの一つに入っていく。もちろん俺たちも続く。
場所的にはちょうどギルドの裏にあたる場所だ。そして厳しいセキュリティーがあって,ギルドの中からしか入れないようになっている。
これは盗難防止のためだったはずだ。
というのも,この倉庫は討伐された魔物を一時的に保管しておく場所でもあるらしい。
中に入ると,そこには何もなく,ただの広い空間があるだけだった。広さは大体高校の体育館くらいだろうか。
そして中ほどまで行くと,ミューさんが話しかけてきた。
「さて,この広さであれば大丈夫でしょう。それに最近ギルドに入ってくる魔物が少ないんですよ。だからたくさん売ってくださいね」
もしかして俺たちの戦闘のせいで近くにいた魔物が逃げたのかな。だとしたらその責任は俺にもあるから,しっかりと魔物を売り払わないとな。
狩ってきたの俺じゃないけど。
そしてフォールフィーが俺の方を見る。
「ヒロキよ,ここで倒してきた魔物を全部出せばいいのかの」
「そうだな。てか,今更だけど,フォールフィーって空間魔法使えたのか」
「なんじゃ,しらんかったのかの。空間魔法の亜空間のことじゃろ」
「そうだが」
「そんな簡単な魔法使えて当然じゃ。むしろよっぽど空間魔法に適性がない限り使えない奴なんていないのじゃ」
(ほう,小娘が何やら喧嘩をセールしていますので,私,まとめて買ってきたいのですが,どうでしょうか)
いや,いいよ。ていうか相手は風竜王だから。異次元の存在だから。張り合うだけ無駄だよ。
そして,こうして俺たちが話しているときに,衝撃を受けている人がもう一人いた。
ミューはその会話を聞きながら,ぶつぶつとつぶやく。
「あれ,今空間魔法の亜空間って言いました? なんですか,それ。いや,確か古代魔法の禁術クラスにそんな魔法があったような気がします。まさかこの少女は使えるとでもいうのですか」
ミューは部屋を歩き回りながらつぶやいている。
「それに最初から気になっていたのですが,この少女はやはりあの怪物なのでしょうか。ですが私に聞く勇気は⋯⋯」
あれ,ミューさん何かつぶやいているな。
まあ,気にしなくていいか。とりあえず売却をするか。
「あの,ミューさん。そろそろ戻ってきてもらってもいいですか」
話しかけられたミューさんはバッと顔をあげると急いでとりつくろった。
「あ,はい。申し訳ありませんでした。で,買取でしたよね」
「そうです。お願いします」
「では現物をここにお願いします」
「じゃあ,フォールフィー,頼んでもいいか」
俺がそういうとフォールフィーは大きく頷いた。
「分かったのじゃ。ここにわらわが倒した魔物を出していけばいいのじゃな」
「そうだ」
さて,フォールフィーはどんな魔物を倒してきたのかな。
そしてフォールフィーは空中に手をかざす。
すると,空間が歪んだ。そして,中から一体の龍が出てきた。
「まずは,ワイバーンなのじゃ」
ミューさんの方を見ると,口をあんぐりと開けている。
「へ,いきなりワイバーンですか」
「何か問題があるのかの」
「い,いえ。ないです。ワイバーンは一応Bランク帯の魔物です。年に数回は討伐されているはずです。だからたとえこんな風に雑に出てきても普通なはずです」
ミューさんは自分に言い聞かせている。よっぽど驚いたらしい。
そして混乱するミューさんにフォールフィーがさらなる追い打ちをかける。
「次にじゃな,これがデスハイタランチュラじゃ」
フォールフィーは体長3メートルはある蜘蛛を取り出した。10体ほど。
「なんですか,この数は。なんでBクラスの魔物がこんなにたくさん倒されるのですか。ありえないです」
ん? これで終わりか? 俺的にはもっといると思ったのだが。
「ヒロキ,すまないのじゃ。わらわが持ち帰れたのは今の魔物くらいなのじゃ」
「そうだったのか。もしかしてBランクの魔物って思いのほか強かったのか?」
それを聞いたフォールフィーは大きく首を横に振った。
「違うのじゃ。逆なのじゃ。最初の方はわらわがいくら手加減をしても死体も残らなかったのじゃ」
そうか。
って,どんだけ火力を出してんだよ。
でも俺も最初の方はそんなだった気もするから怒れないな。
「分かったよ。じゃあ今日は今ある魔物を売ったら終わりにしようか」
「ヒロキー,大好きなのじゃ」
そう言ってフォールフィーが抱き着いてくるので俺はひらりとかわした。
そしてミューさんの方を見る。
「あ,はい。この魔物の売却ですね。分かりました。ちょっと頭が混乱していますが,だいたいで見積もりますね」
お,ありがたい。いくらくらいになるかな。
「えっと,だいたいですが,合計で3億4500万ファーレくらいですね」
「そんなにですか」
「はい。もしかしたらもう少し上がるかも知れません」
すごいな。この国の物価は日本と同じくらいだから1ファーレ=1円くらいだな。あとファーレはこの国のお金の単位だ。円みたいな感じだと思ってくれてかまわない。
ちなみにこの世界では貨幣は金貨や銅貨になっている。支払いではお金の額を言うタイプと貨幣の枚数を言うタイプがあるから注意が必要だ。
俺がのんきに使い道を考えいていると,ミューさんが話しかけてきた。
「えっと,少しよろしいですか」
「はい,何でしょうか」
「えっと,今回の買い取りですが,かなりの額になりますので,今お渡しという形にはできなんですよ」
つまりどういうことだ。
「つまり,後日お金を渡す形になります」
なるほど。それなら全く問題がないな。
「分かりました。どのくらいで受け取れますか」
「そうですね,3日くらいでしょうか」
3日か。じゃあその間は適当に時間をつぶすか。
「了解です」
そして俺たちがギルドに戻ろうとしたとき,倉庫にギルド職員の一人が転がり込んできた。どうやら何かあったようだ。
そして,タイミングは重なるもので,
(大変なことが分かりました,弘樹)
と,シーからも話しかけられたのだ。
「どうした」
俺は二人に答える。
「大変です。ギルマスが超慌ててヒロキさんを呼んでいます。あんなギルマス見たことがないです」
(大変です。なんと今弘樹のステータスを見ていたら,『魔王』に進化できることが分かりました。詳しくは今調べています)
おいおい。なんだ君たちは息でも合わせていたのか。
でもどっちも大変そうだな。そして魔王,か。なんだそれは。