052話 カウラさんの件
俺はカウラと向き合う。カウラもこっちをじっと見ているようだ。なんとも言えない空気が二人を包む。部屋には俺の膝の腕でいまだ気絶している少女の息だけが響き渡っていた。
さて,どうやって聞き出したらいいんだろうか。俺はいままでこういう尋問とかはしてこなかったからやり方がイマイチよくわからないんだよな。
「なぁ,カウラさん」
俺はとりあえず話しかけてみることにした。
「なんだ」
じゃあ,さっそく聞いていくか。でもまず何から聞こうか。
「今から俺が言うことに正直にこたえてくれ」
まずはこういっておかないとな。
「分かった」
「じゃあ,最初はその容姿のことだ。前は髪は緑だったよな。それは変えているのか」
え? こんなことよりテロのこととか聞くことがあるだろうって?
いや,まあ,こういう風に話しかけたほうが後々話しやすくなるからな。決して,俺がカウラさんのことを可愛いと思ったりだとか,今の金髪の方がいいだとか思っているわけじゃないからな。
そして聞かれたカウラさんは少し驚いたような表情をする。まったく,美人はそんな表情でも様になっているから恐ろしいよな。
「まさかその質問からくるとはな。でもいいか。これは魔法で変えているんだ」
ほう,そうきたか。だとしたらカウラさんの本当の姿はまた別なのか? 疑問に思った俺はそれも聞いてみることにする。
「今の姿が本当の姿だな。いくら魔法を使っているからって外見がガラッと変わるわけじゃない。顏は変わらないし,変えられると言っても髪の色と,声くらいだな」
そうか。良かった。今の姿がもともとの姿だったのか。
さて,ここから本題に入っていこうか。
「カウラさん,次の質問だ。カウラさんはベルセルクでテロが起こることを知っていたな」
さて,ここはどう出るかな。俺の予想としては,はぐらかしてくるか⋯⋯。
「テロのことか。やはりこの質問からは逃れられないか。なら嘘をつく必要はないな」
あれ?
「ヒロキの質問の回答としてはイエスだ。私はあの町でテロが起きることを知っていた」
やはりか。
「なら,なんで止めなかったんだ。誰かに通報すれば良かっただろう」
「いや,それはできなかった。なぜなら私が騎士だからだ」
なにっ。カウラさんが騎士だと。でも確かあの時テロのボスはカウラさんがテロに協力していると言っていた気がする。どういうことだ。
「混乱している顔をしているな。では私から順を追って説明しよう」
そして俺はカウラから説明を受けた。それはカウラがこの国の騎士だということ,そしてテロを止めに行ったが何者かに先に止められていたことなどだった。
ははは。笑えてくる。まさか俺のやったことは意味がなかったのか。いや,そうじゃない。今はそんなことより考えることがあるはずだ。
「なあ,カウラさん」
「カウラでいい」
「そうか。なあ,カウラ,お前はなんで連たちと一緒にいる」
そうだ,連だ。俺の親友にもしちょっかいを出しかねないならここでつぶさなくてはいけない。
「それは,勅命が出ているからだ」
「勅命?」
「そうだ。国から直々に私が勇者たちの補助をするようにいわれているんだ」
勅命,か。ならしょうがないのか。でも国は何のためにカウラに連たちを見張らせているんだ。
「安心しろ。私は勇者たちには悪さはしない。何しろ彼らはこの国の希望だから⋯⋯」
突然カウラの言葉が止まった。
どうしたんだ。何かあったのか。もしかして毒とか?
「な,なぁ,カウラ。どうしたんだ」
「いや,なんでもない。これから忙しくなるなと思っただけだ」
どういうことだ。さっぱりわからない。でもまあいいか。連たちに手を出すことはしないと聞けたのだ。
「なあ,ヒロキ。次は私から質問させてもらってもいいか」
なんだ。何か聞きたいことでもあるのか。
俺は無言でうなずく。
「まず,お前の正体は何者なんだ。それに前竜人と人間種のハーフと言っていたが,あれはどうなのだ。あと,なぜ今まで力を隠していた」
おうおう,多いな。どんだけ質問をためこんでいるんだ。あれ,待てよ。俺誰かに俺のことで質問されたとき,こういえって言われていなかったか?
そうだ,連だ。危ない危ない。あいつとの約束を破ってしまうところであった。あいつは怒ると怖いからな。思い出せてよかったぜ。
「詳しいことは連に聞いてくれ」
「そうか。分かった」
よし,完璧だ。間と言い口調と言い,カウラは今頃相当ビビっているだろう。
「じゃあ,お前の口から一つだけ聞かせてくれ」
あれ,全くびびってない? おかしいな。それに俺の口から,か。もしかしてこれで俺が変なことを言っちゃえば後から連に殺されるのか。緊張してきたな。
「なんだ」
「お前の目的はなんだ。世界征服か? それともこの国の滅亡か」
は? こいつは何を言っているんだ。俺が世界征服? この国の滅亡? そんなのみじんも興味がねぇよ。
だが俺の目標って何だろうな。いや,まて。俺の目標があったじゃないか。すこし卑怯な気がするが,これで行こう。
「俺の目的は,炎竜王決定戦で優勝することだ」
「なっ。そうか。私には炎竜王決定戦とやらが分からないが,お前の目的は炎竜王になることだったんだな。分かったぞ」
そしてカウラは立ち上がる。
あれ,もしかして炎竜王決定戦ってあんまりメジャーな大会じゃないのか? まあ,納得してくれたからいいか。
カウラはドアにむかって歩き出した。どうやら帰るようだ。俺的にも聞きたいことは大体聞けたし,帰ってもらった方が気が楽でいい。
そしてカウラがドアに手を掛けた瞬間,俺の膝の上の少女ががばっと起き上がった。
「は,ここはどこなのじゃ。わらわの愛しのヒロキはどこなのじゃ」
そして爆弾を落とすのであった。
それに最初に反応したのはカウラだった。
「おい。お前。どういうことだ」
「どういうこともそういうこともないのじゃ」
「いや,愛しのヒロキってどういうことだよ」
「それは,もう,事実なのじゃ」
「ちょっと待った。いろいろ確認したいことがあるから二人とも落ち着いて」
そして俺は二人を座らせる。
でもほんとになにがあったんだよ。いきなり愛しのヒロキとか言われるとビビるじゃないか。
そして三人はむかいあった。
さて,さっきの発言についても正直かなり気になるが,ひとまず置いておいて,この少女のことについて知らないとな。
俺の予想だと,かなりまずいことになっているのだが,聞いてみるか。
「じゃあ,話を整理するけど,まずおまえの正体を教えてくれ」
「わらわか。そうじゃの,おぬしはもうわかっているような気もするがの,一応言っておくと,わらわはフォールフィーじゃよ」
やっぱりか。悪い予感が当たっちまった。
でもよくよく考えれば当然か。フォールフィーが倒れてそこに少女が現れたらそれはフォールフィーだわな。
「そうか。で,なんで人間になったんだ」
「それはわらわが死にたくなかったからじゃ」
「死にたくなかったから?」
「そうじゃ。わらわは腹を貫かれたがの,人間になればかろうじて消滅せずに済むんじゃ」
「そうなんだ。じゃあ今はダメージを負った状態ってことか」
「少し前まではの。今は元どおり直っておるのじゃ」
そうか。それにしてもなかなかの回復能力だな。この短期間で直ってしまうとは。
それに人化したら死なずには済むのか。もしかしたら俺の将来この方法を使う日が来るのかも知れないな。
まあ,瀕死になることなんて極力なくしたいが。あくまで保険だな。
「な,なぁ,ヒロキ。少しいいか」
「ん? どうしたんだ」
「さっきから言っているフォールフィーって誰だ。ヒロキの友達か」
あ,そうだった。こいつは風竜王の名まえを知らないんだった。どうしよう。驚くかな。
「えっと,言いにくいんだけどさ⋯⋯」
「なんじゃ,フォールフィーの名を知らなかったのかの。まあよいわ,わらわは風竜王じゃ。風竜王くらいは知っておるじゃろう」
あ,言っちゃったよ。
「へ? 風竜王? ここにいる少女が?」
カウラは俺の方を見た。否定してほしいのかな。だが残念だが,俺は嘘はつけない。
「さっきヒロキが戦っていたのが風竜王だよな。で,ここにいるのも風竜王だよな」
「そうだ」
俺は頷く。
「じゃ」
「つまり⋯⋯。えええええええええぇぇぇぇぇぇっぇぇっぇぇ」
まあそうなるよな。いきなり前の前に風竜王がいるんだもんな。
そしてカウラは頭を抱えた。
「いや,タイミング的にヒロキがこの少女を抱きかかえたのは風竜王がやられた時だ。そうか。そう考えれば全て説明がつく。なんで私はその可能性に至らなかったのだ」
「のう,カウラとか言ったかの。今おぬしヒロキがわらわを抱いたと言ったかの」
「ああ,そうだが」
「そうかの。ヒロキはわらわが眠っている間にわらわへの劣情が抑えきれなかったのかの」
は? こいつなんか勘違いしていないか?
確かに抱いたがそれは抱っこの方で⋯⋯。
「まあ,わらわ的にはいつでも良かったのじゃが,まさかわらわが眠っている間にやられるとはの。おぬし,まさかの肉食系であるな」
「いや,ちょっと待った。俺は何も⋯⋯」
「そうだっのか,ヒロキ。私がいながらその少女に手を出したのか。信じられん」
おいおいおい。なんか勘違いされまくってないか。
「いや,どこから突っ込めばいいのかわからないけどさ,私がいながらなんだよ。別に俺はお前の物じゃ⋯⋯」
「そうかの。まさかわらわはお遊びだったのかの。分かったのじゃ。でも別にわらわはそれでもいいのじゃ。わらわの隣にヒロキがいてくれれば⋯⋯」
おい,いろいろ訳が分かんなくなってきたよ。
そしてここにさらなるカオスが舞い降りる。
俺のMPが少し減ると,そこに妖精が舞い降りる。
「シー,今はちょっと中に⋯⋯」
「な,ヒロキよ,その妖精とはどういう関係なのだ」
「まさか,まだライバルがいたのか?」
そしてシーが口を開く。
「こんにちは,皆さん。私はシー。妖精です。今後は弘樹ともどもよろしくお願いします」
「なんじゃ,なんという正室感。まさかこれをアピールするために⋯⋯」
「く,ヒロキともども,だと。私もそんなセリフ行ってみたい!!」
な,何が起こっているんだ。ま,まあとりあえず一件落着ということで⋯⋯。
俺がそう思った時,三人の視線が俺に集まる。
「のう,ヒロキ。その妖精とはどういう関係じゃ。わらわは風竜王じゃし,そんじょそこらの妖精には負けない自信があるのじゃが,既に手遅れな場合もあるのじゃ」
「そうだそうだ。私も気になるな」
えっと,これはどう答えればいいんだ。シーを傷つけず,それでいて二人が納得するような回答は⋯⋯。
思い出せ。俺は日本で何を学んできたんだ。
そう,この場合は⋯⋯。
「えっと,ともだ⋯⋯」
シーが泣きそうになる。正確にはウソ泣きだが,この時の俺には確かめるすべがない。
「えっと,だいじなひと⋯⋯」
フォールフィーとカウラが殺気をはなつ。これは嘘でもなんでもなく自然と出た殺気だが,俺にそれを確かめるすべはない。
「じゃなくて,あいぼう,かな」
みんなの表情が和らいだ。これには誰も反論できないようだ。良かった。
さて,一件落着かな。
その時,カウラのポケットから音がした。それはどうやらカウラの持つ携帯型の通信機のようだ。
「なっ。すまんヒロキ。上司に呼び出されてしまった。行かなくては」
そしてカウラは出ていく。
いきなりだな。それにカウラはサラリーマンか。日本を思い出すな。
それに今なったのはスマホみたいなやつか? そうか,この世界でも作ろうと思えばできるのか。
俺もできないかな。あったら便利なんだけど。
そして俺はシーの方を見る。
「弘樹,任せてください。あの機械の鑑定はしました。少し時間をもらえば再現,いいえグレードアップしたものをご覧に入れましょう」
流石シーだな。
「ありがとう。助かるよ」
「むう。これが正室力かの。わらわも頑張るのじゃ」
よし,これからのことについて話し合うか。それにフォールフィーを野生に返さないといけないしな。
こんなことをしていると夜が迫ってきた。こうして俺の今日は終わろうとしていた。また明日も頑張ろう!
遅くなりましたが,誤字報告をしてくださった方,ありがとうございます。見直したつもりが見落としがかなりあり,大変助かりました。
この場を借りて感謝の言葉を申したいと思います。ありがとうございます。そしてこれからももしよろしければしていただけるとものすごくありがたいです。




