048 魔王と決闘した件
さて,魔王編です。
~サイド 弘樹~
俺はカウラさんに言われた通り,カウラさんの戦闘を見ることにした。それに俺はまだカウラさんのことを信じ切っていない。この戦いを見てから信じることにしよう。
そしてカウラは魔王デルタモルに向き直す。そして剣を構えた。デルタモルも準備は万端のようだ。そして,デルタモルが手を振り下ろす。
ーーーヴァン
空間が切断される。それはカウラを元居た地面ごと切り裂くかと思われたがカウラは右に避けた。そして反撃をする。
カウラの二本の短刀がデルタモルに迫る。デルタモルは,腕でガードするようだ。腕を剣に合わせるように突き出す。
あいつは馬鹿か。剣を腕でガードして無傷なはずはないだろ。
そして短剣とぶつかる。
ーーーガチン。
え? 今金属同士が当たる音がしなかったか? なぜだ。そして俺が驚いている間にも二人は動く。カウラはバックスステップで後ろに下がった。そしてカウラの元居た場所の空間が爆ぜた。
え? え? 俺全くついていけてないんだけど。何が起こってるんだよ。
そして俺の気持ちを無視し,デルタモルが感心したように言う。
「ふむ,これは避けられますか。さすが,と言っておきましょうかね」
「ふ。当たりまえだ。私が誰だと思っている」
「そうでしたな。では,さらば」
そしてまた戦闘が始まった。
で,あれはなんだ。分からないことばかりだぞ。なんでみんな分かったようにしてんだ。もしかしてこの場で理解してないの俺だけ?
(弘樹,一応言うと,あれは空間魔法の鎧です)
キ,キター。シー降臨です。で,空間魔法の鎧だって。
(はい。文字どおりなのですが,使用者の周りを空間魔法で覆い攻撃を通さなくするやつです)
な,なるほど。だいたい分かったぞ。つまりあいつは今なんかかっこいい魔法を使っているんだな。
(は,はぁ。まあその認識でいいですよ。それに弘樹にとっては道端の石ころですからね)
そうか。俺も実は俺が少し強いっていうのを自覚したんだが,そこまでか。まあいいや。それよりカウラさんは大丈夫かな。
そう思い,俺は戦場を見る。そこではまだ剣戟が続いていた。
カウラの二本の剣がデルタモルに迫るがそれはあっけなくガードされる。そしてデルタモルの空間魔法もカウラに避けられる。まさに膠着状態。かくいう俺はフェンリルを思い出していた。
そして何度目かわからないカウラの剣が魔王に迫る。そしてそれはまたデルタモルの装甲に遮られるかと思われたが,そうはならなかった。
カウラの剣がデルタモルに迫りデルタモルは右腕でガードする。その瞬間,魔王の腕が紫のオーラに包まれた。そして剣は空間魔法を無視して腕に当たる。
ザン。
剣は魔王の右腕を切り落とした。
「なにっ」
「はっ,やっと通ったなぁ。だが今補助はなんだよ」
そしてデルタモルに近寄る影が一つ。そしてデルタモルは凝視する。
「な,なんのつもりですか,ミーナ」
「それはあたいのセリフだよ,じじい」
ミーナだ。
なあ,カウラが攻撃する瞬間現れたオーラはやっぱり⋯⋯。
(そうです。あれはミーナの物だと思われます。しかしなぜミーナが行動したのかは不明ですが⋯⋯)
そしてミーナがカウラの方へ寄る。
「なあ,カウラとか言ったよな」
「なんだ」
「悪かった,とは思ってねぇ。だけど,だからこそ私と共闘せえ」
「なにをいっている。さっきの助太刀はありがたかったがあれで十分だ」
どうやらカウラとミーナが激しく口論しているようだ。そしてそれを黙って見ているデルタモルではない。
「く,ミーナよ。どういうつもりかは知らないが,私にあだなすというのならば死ぬまでよ」
そして空間魔法が迫る。だがミーナには当たらない。
「へん,どんな問題。あたいには一度見せた技は通用しないよ」
そしてミーナはデルタモルに切りかかる。空間魔法のせいで目に見える変化はないが右腕を失ったデルタモルは防戦一方だ。
そしてミーナの剣がデルタモルに直撃する。デルタモルは胸元から大きく傷が入った。
なあ,あれはどういうことだ。なんでミーナには空間魔法の鎧が効いていないんだ。
(まさか,無茶ですよ)
な,なあシー。どうしたんだ。
(今ミーナはあの腐食の効果を空間魔法にまで及ばせました)
そうか。空間魔法を腐らせたのか。
(はい。ですがそんなこと普通は無理です。最低でもユニーククラスの力がないとそんなバカげた論理は通用しません)
まあ,そこはいいじゃんかよ。大事なのはミーナの攻撃はデルタモルに通用することだろ。
そして戦場を見るとカウラも戦闘に参加していた。
「まったく,魔族と共闘するなんて,そんな日が来るとはな」
「それはあたいのセリフだよ。まさか人間となんてな」
そして二人でデルタモルに攻撃を仕掛けていく。
カウラの攻撃はデルタモルには効かないものの,確実に足止めしている。
そしてそのすきにミーナが空間魔法すら腐食させる攻撃を放っている。どうやら二人の方が押しているようだ。
そしてミーナの剣が魔王の心臓に突き刺さる。だがデルタモルの動きは止まらない。
おいおい,心臓に剣が刺さっているのに何であいつは動けるんだよ。
(魔族だからです。魔族は心臓がない個体もいます)
じゃあどうやって動いているんだよ。
(魔素です。大気中の魔素をエネルギーとしています)
そうか。てか俺もそうだったわ。
(はい⋯⋯)
そして胸に剣が刺さったデルタモルは空間魔法を放とうとした。だが急息苦しくなったようだ。そしてばたっと倒れる。
「な,何が⋯⋯」
「簡単や。その剣,腐食効果があるんや」
「な,なに」
なあ,どういうことだ。
(剣に腐食効果があったのでそれを体内に刺されたデルタモルはかなりのダメージを食らっているのでしょう)
な,なるほど。えぐいことするな。それにシー,なんか説明適当になってない?
(気のせいです)
そしてデルタモルはどんどん衰弱していく。
なあ,そういえばデルタモルのステータスって測れないのか。
(あ,測り忘れていました。鑑定します)
デルタモル
種族:魔族(魔王種)
Lv908
HP3000/1500000
MP787680/9999999
攻撃力89009
物理防御力7889
魔法防御力9999
素早さ55(-400)
状態異常
腐食(HP-300/m)
毒(HP-100/m)
麻痺(素早さ10/m)
混乱
スキル
空間魔法Lv10
人心掌握術Lv7
なるほど。うん,雑魚やな。もしかして魔王の影武者さんかな。
(いえ,これは十分脅威ですよ。人間には)
そうなのか。それにしてもあとすこしでHPがなくなるな。そして状態異常の時ってこうなるんだ。かわいそうなくらい状態異常やな。でもあと少しか。状態異常だけでもあと8分だもんな。
見ればカウラが追撃とばかりに剣戟を入れていた。どうやらデルタモルはもう空間魔法を使う余裕がないようだ。混乱の効果だろか。
そのとき,宙から二体の魔人が降りてきた。カウラとミーナは一気に警戒する。
「な,何者だ」
そしてそこにいたのは弘樹にやられたはずのデルタモル魔王軍四天王,ガーガートともう一人のテリーだった。
カウラはその二人に切りかかろうとする。だが二人の間に俺が入った。ここでこの二人を殺されたら困る。
「なっ。ヒロキ,これはどういうことだ」
「ん? ああ,こいつらには町の人を護衛してもらっていたんだ」
「は? 護衛」
そしてその二人がヒロキによる。
「ヒ,ヒロキ師匠。護衛終わりましたぜ」
「そうか。それはご苦労だったな」
「へい。これからもいつでも呼んでくださいね」
「ああ,そうさせてもらうよ。それで町の人には驚かれなかったか」
「へい,師匠。すんごく驚かれましたがそこはなんとか頑張りましたぜ」
「そうか。お疲れ様」
「それで,報酬の方なのですが⋯⋯」
「ん? ああ,そうだったな。でもほんとにいいのか」
「へい。もちろんです」
そしてそこにいた人は全員唖然となる。そしてそれは元から二人を知っているミーナも例外ではない。
「な,何があったんや。あんなにプライドが高かった,いや,もはやプライドでできていたあの二人が,なんで敬語を使っとるんや」
そして二人はミーナに気づく。
「お,そこにいるのはミーナか。久しいな」
「そうだな。お前もちゃんとヒロキ師匠のために働いているか?」
「ちょ,ちょっとまちぃや。状況説明,頼みますわ」
「いや,俺が普通に従えただけだし」
そして俺は事情を話す。
二人が町に攻め込んできたとき,俺は町の人を守っていた。そしてそこにまずはガーガートが来たんだ。なぜか俺を見つけると攻撃をしてきた。
そして,俺はぼこした。意外と強かった記憶がある。そしてそいつから町の東にも四天王がいるということを聞いたから俺はすぐに行って,ぼこした。
そして二人にお説教していると,泣き出してしまったんだ。困った俺は二人に条件付きで自由を与えることにした。それはこの街にいる市民の警護だ。ここにいる人を安全な場所まで護衛出来たら開放してやることにした。
そしてそれを言ったらなぜか二人は俺に敬語を使い始めたんだ。それに「ぜったい師匠のために国を作る」とか聞こえてきたけど俺は無視することにした。
そして今に至るというわけだ。
ここまで聞いたミーナは口をあんぐりと開けていた。まったく,何に驚くというんだよ。見るといつの間にか近づいてきていた連もあんぐりとしている。だがすぐに気を取り戻す。そして自己紹介を始めた。
「えっと,俺は連だ。一応ここにいる弘樹の親友だ」
「な,ヒロキ様の親友様でしたか。これは失礼しました。私はテリーともします。以後お見知りおきを」
「ちなみに俺勇者ですが」
「そうなのですか。それが何か?」
「あれ,おかしいな。勇者って魔人を倒す代名詞なんだけどな」
「ちなみに私はガーガートです,師匠の親友様」
「はぁ。どうも」
そして三人は握手する。
「えっと,私はカウラです。一応,騎士です」
「どうもどうも」
「よろしくです」
戦場に和やかな空気が流れる。そしてその時グアーという声が聞こえた。どうやらデルタモルが本格的に死にそうなようだ。ここまで来たならもういっそ一思いに殺してあげるか。
そして俺はデルタモルに近づく。そして思いっきり殴った。グシャ,という音がし,完全に死んだようだ。
こうして魔王デルタモルは死んだのであった。エンラの町の戦力対魔王デルタモルは結果としてエンラの圧倒的勝利となった。
あ,俺が殺しちゃったけど良かったかな。
「もちろんですとも」
「全く問題ないです」
そうか。それは良かった。じゃあ,撤収するか。そしてみんなが歩き始めたとき,突然それはやってきた。
(----っ。弘樹っ)
分かっている。
そして俺は灼熱の息吹を放つ。それは町とは逆方向のそれに放たれると
ドゴーーーーーン
空中で爆発した。
「なっ。どうしたの,ヒロキ」
「なんや」
「「素晴らしき魔法。これぞ極地」」
だがいまのおれにこたえるよゆうはない。なぜなら,そこには
ーーー風竜王がいるのだから。




