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039話 スタンピートに飛び込んだ話

 どうも,ルーです。今回も連編です。楽しんでもらえたら嬉しいです。


~サイド ケルロ・ベルセルク~


 その知らせは唐突だった。儂がこの街に帰って来て三日。儂はメアリーと久しぶりの余暇を楽しんでおった。


 全く王都での貴族の付き合いは疲れるのう。儂はもう引退したいんじゃが。


 そう思っていた時,部屋に騎士が飛び込んできた。

「た,大変です領主様」

儂は驚いたがあくまで平静を保つとその騎士の言葉を待つ。

「それで,何があったのじゃ。儂の部屋に飛び込んでくるというのだからかなりの重大なことなのじゃろうな」

儂は皮肉も込めてこの言葉を言った。見たところこの騎士が若いからノックのせずに入ってきてしまったのじゃろう。儂じゃなかったら怒っておったわい。


 だがその後に騎士から言われたことはまさに緊急であった。

「スタンピードです。大量の魔物がここに攻めてきています」

「な,何じゃとぉ」


 その言葉を聞いた儂はすぐさま用意を整えこの街の騎士団駐屯所に行く。そこでは儂が来る前から防衛計画が練られていた。儂が行った瞬間皆から視線を浴びる。儂はこういう視線は苦手なのじゃがここは威厳を持って応じる。


「して,どのようになっておる。状況を説明せよ」

儂がそういうとその場にいた騎士が前に出てきて言う。

「魔物の数は正確には分かりませんが推定三千以上。中にはBランクの魔物や数体ですがAランクの魔物もいます。ここまで到着するまでの時間はおよそ半刻にもありません」


 儂は思わず眩暈がした。何せBランクがいてAランクがいるなどこれはもう歴史に残る大災害であるからだ。このスタンピードは国が総力であたっても何ら不自然がない。

「それで防衛戦力の方はどうじゃ」

「騎士が三百。冒険者は五十も集まればいい方でしょう」

「なんと。それだけか」


 この戦力ではこの街を守り切るなど到底不可能じゃ。何かこの街に力を貸してくれる戦力はないのかの。


 そして儂はここに来るまでの出来事を思い出す。


 そうだ。もしかしたらあの勇者たちならこの異変にも何か対応できるかもしれないのう。

「勇者じゃ。勇者を呼べ。彼らならこの土地にまた平和をもたらしてくれるじゃろう」

それを聞いた騎士はすぐに勇者を呼びに行った。そしてその場の会議はこの街を勇者が来るまでどのように守るかに移動した。ケルロも時おり意見を出し名がら会議は進んでいく。



 そして五分が経過した。この街の外周を覆う壁の上には魔法師,下には騎士や冒険者が魔物を迎え撃つ準備をしていた。そして魔物が近づいてくる。

「ウガァァァァァァ」


 先頭はオーガだった。いきなりCランクの魔物だ。だが冒険者の一パーティーが迎えうつ。さすがは魔物との戦闘になれている冒険者というところか。傷一つ負わずに軽く倒してしまう。だが魔物はまだまだ来る。その中にはまだBランク以上は居なかったがそれでも数が数だ。百はいる。そして全面戦争が始まった。





 戦闘が始まってから三十分が経過した。状況は悪くなるばかりだ。


 まずいのう。かなり押されておる。あと残り持って十分というところか。まだ死者を出していないだけましかのう。

 

 ケルロの見立て通り状況は最悪であった。最初に冒険者が戦線離脱したのが開始から三十分ほどたったころ。Dランク冒険者のパーティ―なのによく頑張ったと思う。そして一パーティーが抜けてからはどんどん抜けていった。そして今に至っては冒険者は残り一パーティー。騎士も残り十人ほど。魔法部隊はかろうじてまだ残っているが魔力ももうすぐ尽きるとのこと。どこからどう見ても絶体絶命であった。

  

 その様子を高台から見ていたケルロは自分も戦場に行く決意をする。


 わしもせめて華々しく散ろうかのう。もう少しこの世にいたかったがこれも仕方ないのう。せめてできるだけ魔物を倒せればいいがの。


 そう思うと高台からとび降りる。そして下にいたゴブリンを真っ二つにすると近くにいた魔物に切りかかる。その動きはまさに剣鬼であった。それもそのはず。このおじいさん元騎士団で団長をしていたものだった。そしてこの公爵家に婿入りして今に至るというものだった。

 

 ケルロは魔物をどんどん切り裂いていく。その働きもあって味方の士気が上がり一時的に魔物達を押し返すことに成功した。このまま行けるかもしれない。そのケルロの働きと押し返したことによってだれもがこのままいけるかもしれないという淡い思いを持った。しかしそれは一瞬で裏切られることになる。


 ーーードン。


 そんな音がするとケルロが吹っ飛んだ。そのまま吹っ飛んだ先にある町の壁に衝突する。ケルロが衝突したところは壁が割れていた。


「ケ,ケルロさん」

誰かがそう叫んだ。そしてケルロを戦闘不能にした元凶のほうを見る。そこには一体の虎がいた。

「まさか,白虎」

誰かがそう叫んだ。実際その魔物は白虎であった。

「白虎てあのAランクの?」

「そうだ。あの静かなる暗殺者(サイレント・キラー)だよ」


 一番最初その場に耐えられなかったのは唯一残っていた冒険者たちだった。

「ひ,ひぃぃぃ」

そう叫ぶと一目散に逃げだしていく。だがそれを見逃す白虎ではない。ふっと姿を消すと逃げ出す冒険者の前に行き,そのパーティー三人を一気に食い殺した。戦場では敵に背を見せてはいけない。見せた者から殺される。そう感じた瞬間だった。


 く,何事じぁ。儂が寝ている間に何があったんだ。目の前では白虎が冒険者を食っているではないか。これは何事じゃ。まさかあれは白虎なのか。だとしたほんとのホントに終わりだ。あの化け物には誰も勝てないしの。ここまでか。


だが運命はそうはならなかった。


「シャイニングソード」

そう声が聞こえたかと思うと一人の少年が白虎に切りかかった。その剣は白虎を浅く切り裂き一時的に後退させることに成功する。だが白虎はその自分を傷つけた少年に反撃をする。一気に姿勢を低くすると襲い掛かった。


 だれもが死んだと思っただろう。だが現実はそうはならなかった。あとから来た青年が魔法を唱えると炎の塊がいくつかできて白虎に飛んで行った。そしてそれは命中。またしても白虎にダメージを与えることに成功したのだ。


 救援に来たのは連たちであった。騎士から報告を受けた後一目散に走ってここまで来たのだ。そして目の前で襲われている冒険者を見て連が襲い掛かった,というわけだ。

「これはどういう状況だ」

連がつぶやく。そして立夏がそれに答えるようにつぶやく。

「何でもいいけどあの虎が元凶って感じしない? 取り合えずあいつを倒せばいいんじゃないかな」

「だな」

そういうと連は指示を出す。

「俺と立夏と舞子でこいつを仕留める。だからそれ以外でその他の魔物を倒してくれ」

「分かったわ」

スタンピードの第二ラウンドが始まる。



 嘘じゃろ。あやつらはあんなに強かったのか。


 目の前で人外同士の戦いが行われていたからだ。最初に連の出した指示もあほだと思ったが,それ以上に今連たちが白虎とまともにやり合っているどころか若干押していることに驚きを隠せないでいた。


 これが勇者の力かの。これは鮮血の悪魔を倒したと言ってもうなずけるぞい。


 


~サイド 連~

こいつは,強いな。


 騎士からこの街が魔物の被害にあったと報告されてこの街に飛んできてみれば最初に見たのは虎に襲われる冒険者たちだった。俺は怒りを抑えきれなくなり後先考えずに切りかかってしまったのだ。数合やり合っているうちにこの魔物が雑魚とは一線をかく魔物であるとわかった。だがそれも俺たちを倒すには至らない。俺たちはここに来るまでにいくつもの魔窟に潜りたくさんの魔物を倒しレベルを上げてきたのだ。たかがAランクにそうそう遅れをとるようなことはない。-ちなみに今の連たちの強さは人外であるが誰に似たのか,それに気づく様子はない-


このまま押していけば勝てるな。


 そう確信した俺は攻撃のペースを上げる。まわりを見れば俺の仲間が,俺に感化された他の騎士や冒険者が魔物と戦っていた。どうやら俺に影響されて傷があるのに戦っている者もいるようだ。



 このまま勝つ。絶対に負けない!


 白虎の動きが鈍ってきた。どうやらもう残りの体力がないようだ。弘樹が勝ちを確信した瞬間大地が揺れる。それは連たちが異世界に召喚された時に起こった地震と似ていた。


「な,何だ」

「これは地震?」

まわりの人たちは地震を経験したことはないようだ。突然起きた地震に戸惑っている。この辺りは地震があまりない地域なのかも知れない。そんなことを考えていた時,遠くから何かが飛んでくるのが見えた。



「あれはなんだ」

誰かが言い始めた。そしてその何かはどんどん近づいてくる。あの速度だとここまで来るのにあまり時間がかからなそうだ。その影が大きくなりついに細部まで見えるようになる。そこにいたのは紛れもない正真正銘の緑色の龍だった。


 あ,あれはなんだ。


 突然現われた龍がここから少し離れたところで急に止まり何かの準備をした。そして空気を吸い込んだ。連はブレスを発射するんだと理解した。おそらくここまでとどくだろう。あれを食らえば俺たちは死ぬ。不思議とそんなことが分かった。


 に,逃げなければ。


 そんなこと連以外にもわかっているというのに誰も動こうとしない。否。誰も動けないのだ。その龍がブレスを放出する。



ーーーバーン


 轟音がしブレスが放たれる。それは風属性のブレスだった。龍を中心に横向きの竜巻が発生した。龍から発射されたブレスは大地を切り裂きえぐりながら俺たちの元までやってくる。


 あ,俺死んだわ。


ーーーズドーン


 その瞬間俺の近くでそんな音がしたので反射的にそっちを見てしまう。見ると連の目の前の大地がえぐれ中からこれまた龍が出てきた。それは鱗は茶色のゴジ〇のような龍であった。


 その龍はふと俺たちの方を見るとすぐに目の前のブレスに目線を戻し一歩踏み出した。すると龍の目の前の地面から土の壁が飛び出し俺たちを守る盾になった。そして風のブレスと衝突する。


 風のブレスが収まると、そこにはまだ土の壁が立っていた。さきほどのブレスでもびくともしていないようだ。


 おいおい嘘だろ。こいつは何なんだよ。さっき現れた飛んでる龍もよくわからなかったが今目の前に出てきた龍も何なんだよ。


 俺は当然の出来事に追いつけていないでいた。だが俺は一つの仮説にたどり着いてしまった。いや,たどり着いてしまった。

「もしやあれがーー


  ----風竜王」

と。

 さて,風竜王が出現してしまいましたね。これからどうなるのか,楽しみです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] サブタイがスタンビートになってるところ 動物等の集団暴走はスタンピードが正しいのではないでしょうか?
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