024話 王決定戦に参加することになった件
こんばんはルーです。まずはここまで読んでくださりありがとうございます。この作品はですね,ついにブクマ100を達成しました(イエーイ)。
ということでこれからもこの作品とルーをよろしくおねがいします。それではお楽しみください。
弘樹がシャルドを倒してから数時間が立ち気絶したシャルドが目覚めた。
「いたたた,私は今どこに,なぜ。まさかここはあの世か」
「いや,違いますよ,シャルドさん。ここは森の中。まあ,戦闘した場所からはだいぶ離れさせてもらいましたけどね」
「そうか。私は,負けたのか」
「はい,そうです」
容赦ない男,弘樹である。
「しかし,なぜ貴様はそんなに強いのだ。訳が分からん。私はこの百年,いやもっとか,無敗を貫いてきたのにのう」
そうなんだ。悪いことしちゃったかな。でも魔物にとって勝者こそが正義。問題ないよね。
「あの,一つ聞きたいことがあるんですけど」
マイペースな男,弘樹である。
「ん? なんじゃ。私は負けた身,故に逆らうことなどできんよ」
「じゃあ,聞くんですけど,俺の竜王決定戦の参加はなしになりましたか」
「その件かい。それなら安心せえ。しっかりと参加になっておるよ」
そうかそうか。それは良かった。って,参加!?
「参加ですか。どうなってるんですか」
「私もすまんとは思うがそればっかりはどうにもならんのじゃよ。あれは参加が決まった時点で参加取り消し不可じゃ。何が何でも参加させられる。もし参加したくないなら死ぬしかないのう」
「そんな。まあ仕方ないかな。こうなったらやるしかないな。あと,竜王決定戦について教えてください。俺,ほぼ知らないんで」
「分かったわい。それにしてもおぬし,世間知らず過ぎんか。龍の中で竜王決定戦を知らん奴はおぬしくらいじゃとおおもうぞい」
「そうですか。俺だけですか。照れますねえ」
「褒めとらんわ。それで,竜王決定戦じゃったな。それは簡単に言うと新しい竜王を見つける戦いじゃよ。おぬし,炎竜王が3年ほど前に死んだのは知っておるな」
「そうなんですか。初耳です」
それを聞いたシャルドはきょとんとなった。日頃のシャルドを知っている者がここにいたらシャルドは100年くらいいじられただろう。
「そこから知らんのかい。分かった。そこから説明させてもらうぞい。まず竜王というのは4体いてな,炎竜王,水竜王,風竜王,地竜王じゃ。そしてそれらは各々の属性の龍どもをまとめておった。じゃがな,色々あって炎竜王が死んだんじゃよ。それでのう,新しい竜王を決める竜王決定戦が行われることになった。まあ,新しい炎竜王を決めるから炎竜王決定戦というほうがいいかの」
ふむふむ。つまり大統領とか首相な感じかな。それらは各属性の龍をまとめていたと。で,その竜王の一人の炎竜王が死んでしまったと。なるほど。あれ,でもなんで炎竜王は死んだんだ。俺はそれをシャルドに尋ねた。
「それは話が長くなる故また今度じゃ。風竜王やらなんやらが関わってくるぞい」
「分かったよ。だいたいは飲み込めた」
「うむうむ。それで火属性の龍に参加を求めたのじゃ」
つまり炎竜王を決定する大会で次の炎竜王が決まるんだな。そして俺がそれに出ることになったと。
「そうじゃよ。ただ次代炎龍王を候補に選ばれるくらいの強さを持つ者だけじゃからぬしが想像するよりは少ないと思うがの」
「分かりました。じゃあ,それに参加すればいいんですね。がんばります」
ただ,弘樹が良くても弘樹の相棒が当然許可するわけがなく,
(何言ってるんですか,この爺も弘樹も。竜王決定戦はダメなんです。絶対だめです)
いいじゃないか。たかが龍と戦うだけだろ。
(だめですよ。それよりも竜王決定戦についてですよ。あれはダメです)
なあ,何でそんなに竜王決定戦に参加しちゃダメなんだ? 話を聞く感じ,新しい竜王を決める感じだろ。だめどころかむしろいいんじゃないか。強い奴と戦えるし。
(その致死率が問題なんです)
致死率? そんなに死ぬのか。
(そうなんですよ。炎竜王は今まで一回も変わったことがないから炎竜王決定戦はこれが初だけど,風竜王決定戦は行われたことがあるんです。ですが,その時出場した龍の7割が死亡したんです)
七割って。それってほぼ死んでいるじゃねえか。
(はい。それに再起不能になったものも含めればもっとかと)
なんでそんなに死ぬんだ。戦いがハードすぎるとか?
(それもあるんですが,それ以前に竜王決定戦のルールに問題があるんです)
ルール?
(はい。それは負けたものは勝ったものの言うことに絶対服従。そして,勝った龍はかなりの確率で負けたものに自害を命じるんです)
そんな。なんでそんなことを。
(それは,もし自分が竜王になったとき強い龍が残ってたら反乱とかされるかもだからです)
そうか。一応理にかなっているんだな。じゃあ,俺はどうすればいいんだ。参加しないってわけにもいかないだろう。
(強くなるしかありません。戦って誰が相手でも勝てる,そんな強さを身につけなくては)
また,強くなる,かよ。まあ,分かり易くていいけどな。
(マスター,頑張りましょう)
おう。
「何やら吹っ切れた顔をしておるのう。さっきから一人でうんうんうなってるし何をしているんじゃ」
「それはお構いなく。それで,どこでいつ開催されるんですか」
「やっと儂の説明したかったことが説明できるのう。場所は炎竜王の祠。時期はまだ未定じゃよ。これは決まり次第教える」
「炎竜王の祠ってどこですか」
「そうであった。おぬしが世間知らずなのを忘れておったわい」
「えへへ,どうも」
「褒めとらん。で,場所じゃが,ここから西にずっと言った場所じゃよ」
「ここからずっと西ですね。分かりました」
「うむ。それではわしはこれで去らせてもらうわい」
「ありがとうございました。じゃあ,また竜王決定戦で」
「そうじゃの。ではさらばじゃ」
そう言うとシャルドは龍形態に戻り大きく羽ばたくと空の彼方へ飛んで行った。
(これは困ったことになりましたね)
ああ,そうだな。だけど考え方を変えればいいことでもある。これを機に強くなれるってことさ。
(なるほど。マスターらしいです)
わかってくれて嬉しいぜ。あとさ,もし直せるならそのオール丁寧語何とかならないか。
(このしゃべり方ですか。これを直せというんですか。私からこれを取ったらもう何も残りませんよ)
そこまでか。まあ,そこはおいおい直してくれればいいよ。とりあえず,これからどうしよう。まだまだ強くならないといけないよな。そうだ,その前に鑑定さんに名前を上げたいと思う。
(名前ですか。それはありがたいですが今でいいのですか)
ああ。今までいっぱいお世話になったしこれからもお世話になる予定だから早めに上げたかったんだ。
(わかりました。それでは名付け,お願いします)
ああ。お前の名前は,シーだ。
その瞬間弘樹から大量のMPが抜き取られる。
これは何なんだ。MPがかなりなくなったぞ。もしかして名前を付けるのってMP消費するのか? どうだ,鑑定。いや,シーか。
だが俺がシーの方を見ると,さっきまで浮いていたシーが地面に落ち,あふれんばかりの輝きを放っていた。
もしかして俺のMPが減って理由ってこれか。それにしてももしかしてシーは進化するのか。
そして光が収まる。そこにいたのは十五センチくらいの妖精だった。
「って,ほとんど変わってないじゃないか」
「そんなことないですよ。かなり変わりました。まず私自身がMPを持つようになりました。そしてわずかですが戦闘能力が高くなりました」
「そうか。つまりこれからはシーも戦いに加わるのか?」
「いえ。私は弘樹と比べると雑魚中の雑魚ですから参加しません。その代わり弘樹の能力を上げれるようになりました」
「つまりバッファーってわけか」
「はい。ちなみに私は弘樹の森羅万象の叡智にも連動しているのでその能力も使えますしもし私が死んでも弘樹が生きていれば生き返ります」
「それは嬉しいな。じゃあ改めてよろしく,シー」
「はい,よろしくお願いします,弘樹」
「とは言ったものの今の俺たちの強さは不安だよな」
「そうですね。今のままでは少し戦力に不安があります。特に竜王決定戦で優勝するにはまだ力が足りません」
「かといってなぁ,強くなるのってどうすればいいんだろうな)
「手っ取り早いことは進化することですが,すぐにはできませんしね」
「そうだな。ま,とりあえず西にむかって進んで炎竜王の祠を目指そう」
「ですね。その道中で何か見つかるかも知れません」
「よし。決まったらすぐ実行だ。出発進行」
(そうだ,マスター。一つ言っておきたいことがあります。それは人形態で移動してほしい,ということです)
ん? いいけど。それより妖精の時もこの心の中でしゃべるやつできるんだな。
(マスターと私の社会勉強のためです。人形態で行くということはいくつかの町や国を抜けるということ。そしてそうしていれば自然と社会勉強になる。どうでしょう,この完璧な作戦は。そして私は妖精でも念話が使えます)
え,こ念話っていうんだ。それにシーはなぜか自信家になってしまった。全く,誰に似たんだろう。
こうして俺達の炎龍の祠を目指す旅は始まった。それにしても町か。久しぶりだな。それに人間か。あと,森羅万象の叡智さんによると人間種以外にも獣人種や吸血鬼種などがいるらしい。まさにファンタジー。楽しみだなぁ。
今回は説明が多めでしたね。さて二章では弘樹の人間での生活と連たちの成長を見ていきたいと思います。それではこれからもよろしくお願いします。