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019話 はじめて魔窟を攻略した話 

 こんにちはルーです。まずはここまで読んでくださりありがとうございます。今回は連の対ウルフ編最終話です。楽しんでもらえたら嬉しいです。


 俺たちは荘厳な扉の前にいた。

「ここがボス部屋」

そう誰かが呟いた。ここはボス部屋の扉の前。勇者一行は今まさにボスに挑もうとしていた。


 ここが,ボス,か。これは思ったより緊張するな。だが,全く問題がない。俺たちはもうこの魔窟のボスくらい簡単に倒せるはずだ。


「そうよ。ここには今前以上に強い敵がいる。ただ,こいつを倒せば今回の魔窟攻略は成功よ」

「よし。さっさと倒しちゃおうぜ」

「よし,行くぞ。準備は万端。負ける原因がない」

そういうと俺は剣を取りだした。

「全く,連は心配性なんだよ」

「緊張でガッチガチの立夏には言われたくないな」

みんなから笑いの声が漏れる。


 レベルは上げたし,装備も完璧だ。大丈夫,抜かりはない。みんなの健康も大丈夫。よし。

「よし。行くぞ」

そういうと俺は扉を開けた。


 ドアを開けると広いそこは見渡す限りの草原だった。


 な。平原か。大変そうだな。指揮である俺がしっかりしないと。だが,もしかしたら今まで戦ったことのない魔物が出るかもしれないな。これは注意が必要か?


「おい,どうなっているんだよ。ここは洞窟だったはずだよな」

「勝,前にも言っただろう。ボス部屋はたまに風景が変わるって。だけどまさか草原になるとはな」

「そうだっけか」

「ああ。勉強不足だ。しっかりしてくれよ」

まったく,こいつらには後で魔窟についていろいろ教えないといけないか。



 その瞬間遠くから咆哮が聞こえる。

「ウォーン」

おいおい。これじゃあ,ここのボスは,

「ウルフかよ」

「まじかよ」

「厄介なのが当たったわね」


 ウルフか⋯⋯。厄介だな。俺たちなら負けはしないが,これは本格的に俺も頑張らないといけないかな。だるいな。まあ,ぼちぼちやりますか。


 そして俺は平たんな声でみんなに告げる。

「おい,お前ら。気合い入れろ。ここはウルフだが全く問題ない。きばっていけ」

「「「おう」」」


「まず,ウルフについてだが,何部隊かに分けてくる。だから,まあ頑張ろう」

そう言って俺が視線を向けるとそこにはウルフが何部隊かに分かれているところが見えた。


 はぁ,これはどうしよう。考えろ,俺。

「どうする連。ウルフであれば前衛だけで止めることは不可能に近い。かといっていたずらに攻撃するのもMPのむだだ」


 それもそうだ。なら,どうするのがいい? 思い出せ。戦術の基本,相手の作戦を利用する。つまり⋯⋯。

「決まっている。ウルフは知能の高い魔物。だからこそそこを利用する。最初に最大火力をぶちかませ。第一陣をいっきに仕留めるぞ」

「まじかよ。そこまで極端な作戦でいくのかよ。信じていいんだな」

「ああ」

「第一陣来るわ」

「舞子,陽太,魔法の準備はどうだ」

「いつでもいけるわよ」

「僕もだ」

「よし。前衛も容赦はするなよ。思いっきり叩きのめすぜ」

「おう」

「ワカリマシタデース」


「衝突まで3,2,1,衝突します」

風子がそういうと前衛とウルフが衝突する。

「ていやー」

「炎魔法,ファイアボール」

「イクデース」

「ぬん」

「はっ」

全員の最大攻撃を受けた魔物はひとたまりもなく,ウルフの第一陣はかなりのダメージを負ったようだ。

「よし。だがまだ気を抜くなよ。ここで決められなければ最悪負けもあり得る」

「ああ,もちろんだぜ」

そして無事第一陣は突破した。

(あとは残りの戦力と向こうの出方だな。これで俺の予想が正しければ⋯⋯)

「ウルフ,三方向に分かれた。一方は前から,それ以外は横から回り込んできたよ。こちらを囲む作戦のよう」

そう風子が報告した。

「分かった。予想どうりだぜ」

「次はどうするんだい。こっちも三つに分けるのかい」

「違うね。その案もいいが今は一点突破だ。一気にあいつらのボスを倒すぞ」


 そうこれが俺の考えていた作戦。まず第一陣を倒しこちらを警戒させる。そして戦力を分散したところを一気に叩く。これは前ビルさんから,ボス部屋では魔物が複数体出現することはあってもボスが2体以上になることはない。そしてボスを倒してしまえばダンジョンはクリアとなるということを聞いていたからたてられた作戦だ。


 まったく,本当にビル団長にはかなわない。これからも頼りにしていこう。

「一点突破ってどういうこと」

立夏が聞く。

「ボス部屋は,魔物は複数いてもボスは一体だ。つまりそいつを倒せば俺たちの勝ちだ」

「そっか。それがこのウルフたちを従えているウルフなのか」

「ああ,そういうことだ」

「おそらくだけどあいつ,ハイウルフよ。周りのやつとは一味違うわ」

風子が警告する。

「ハイウルフか。厄介だが何も問題はない。まずはハイウルフのいた場所から直線で来ている集団を叩く」

「前方群れとぶつかるわ」

「ここもすばやく殲滅するぞ」

「「「おう」」」


「ていや。はっ」

よし。みんな倒したな。

「進むぞ」

「こんな作戦でホントに大丈夫かな」

「ああ,大丈夫だ。俺を信じろ」

「全く,これだから連は」

「敵のボスと接触するわ」

「戦闘準備。他の群れが追い付く前に片を付けるぞ」

連たちはウルフとその取り巻きの数匹がいる場所まで来た。


 流石にボス一体が残っているということはないか。残っていてくれたら楽だったんだが。だが,これくらいの数ならすぐに殲滅できる。ただ,問題なのは他の二部隊が追い付いてくるということ。この状態で挟み撃ちされたらまずいな。


「残りボスだけよ」

「気を引き締めていけ」

「攻撃開始だ」

 


 流石はウルフのボスと言っておこうか。さきほどから俺たちが数分間戦闘しているがこれだけの数の理がありながら倒しきれていない。


 だがボスももう終わり。やつは相当傷ついてきている。持ってあと一分か。なら何も問題はない。


 俺がそう思った時風子が絶望的な報告をした。

「連,他の二部隊がもうすぐ到達する」

「あとどのくらいだ」

「三十秒」

そういった風子に焦りの表情が見えた。だがここで俺はあえて士気を上げる。

「一気に決めるぞ」

 

 あと少しで終わり。倒しきればこちらの勝ち。だがそれができなければ負けるかもしれない。だが,負けるわけにはいかない。後ろから敵の部隊は着々と近づいてきている。もう後がない状況だ。

「あと少し火力があれば」

「く,押しきれないか」

「マズイデース」

みんなからそんな声が上がる。


 このまま俺たちは負けてしまうか。いや,そんなことはさせない。させるわけがない。火力が足りない? なら俺がもっと強くなればいいんだ。今この場所で。俺がそんなこと許すわけがない⋯⋯。


「みんな,少し下がってくれ」

「どうして急に」

「勝てる手があるのよ,ね」

「ああそうだ。だから少し下がってくれ」

「分かったわ。いったん退避よ」

「分かったぜ」

そういうとみんなはいいタイミングで退避していく。そして戦っているのは連だけになった。


 ああ俺が退避してくれと言えばこんなにもあっさりしてくれるのか。俺にはもったいない仲間だ。そんなみんなを死なせるなんて御免だ。めんどくさいけどーーー


ーーー本気を出そう。


 そして連は今まで使ったことのない魔法を使う。


 今仲間を守りたいと思った瞬間,ある魔法が浮かんできたな。これは異世界人の特権か? まあ,いい。使えるもんが何でも使う,それが俺の精神だ。そしてこの魔法なら勝てる!


「発動,魔法剣」

「なっ。まさか連,使えるようになっていたのか」

「いや,そんなことは一言も言っていなかった」

「つまり,今習得したのか!?」

「シンジラレマセーン」

「連,それは⋯⋯」


 俺はみんなから驚かれるがそんなことはあえて無視し思いっきり魔法剣に力を込める。そして俺がMPを加えていくごとに魔法剣が光り始めた。やがてその輝きは最高ちょうまでいく。そしてそれを一気に魔物めがけてふった。

「見てろ,立夏。俺の本気を。発動,シャイニングブレード」


 魔法剣がハイウルフにあたった瞬間光があたりを覆う。そして光が晴れたとき,そこに立っていたのは俺だけだった。見るとハイウルフは胴体と首が離れ離れになっていた。


ああ,勝てたようだ。だけど,意識が⋯⋯。

「れーん」

立夏が駆け寄る。すると連はいきなりふらっと倒れてしまった。

「れん,れん。大丈夫?」

「ああ。ただ頭がすごく痛い。それに腹もだ」

そこで舞子が連の状態を調べる。

「魔力不足ね。あなた使い過ぎよ。まあそりゃそうね。あんだけ大技使ったんだもんね」

「舞子,それ治るよね」

「そう心配しなくても大丈夫。ほっとけば治るわよ。ただ魔力不足中はあんまり歩かせないほうがいいかもね」

「分かった。私おんぶしていく」

そういうと立夏は連をおんぶする。

「別に立夏じゃなくてもいいと思うけどね⋯⋯」

その言葉は立夏には聞こえていなかった。


 こうして連たちの魔窟攻略は無事終了したのだった。


 どうでしたか。連の話は次回でいったん終わりになります。


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