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霧の遺跡

序章はここまで

 その日は、珍しく朝から霧が出ていた、砂漠とは言え年に数回だが雨は降る。


 寒い年には雪も降る、砂漠とは日中と夜との温度差で、組織が破壊される事から始まる。


 そして降水量の少なさがそれに輪をかけて物質を砂に変える。



   

   


 その日、軍曹は体調不良でドクターストップが掛かっていた。


「面目無え…」


 眼の下にクマの出来ている軍曹と2人で密閉空間に閉じ込められて、菌が自分に移るリスクを考えると1人で行った方がマシに思えた。


「俺1人で行くよ、無線は常にオープンにしとく」


 トラックには無線機とGPS、それに緊急用に衛星電話も装備されている。


 これはリスクを減らす為だ、実際にパリダカールラリーなどでは、砂漠でエンストしたら車を燃やして救援を呼ぶしか無い。


 砂漠地帯でサバイバルする為の装備も、常に用意してある、砂漠での遭難とはそれだけリスクがあるのだ。


 ロックは霧の中ゆっくりと進むが、やがて霧が濃くなり過ぎて、アスファルトの黒さえ判別しにくくなった。


「ヤバイな…道が見えない」


 ルートから外れる、それは避けたい、いきなり砂丘の上からダイブとかは、したくは無い。


 そう思った時に霧の中に建造物が見えた。


 遊牧民ノマド達が霧の遺跡と呼ぶゲートが見える。


「ウロウロするよりマシか…」


 無線機で基地と連絡を取る、霧で視界が悪い為遺跡で待機すると無線で知らせると、ロックはトラックをゲートの近くへ寄せた。


 ゲートを潜った先は石畳の広場になっていた。


 ロックはトラックのエンジンを切ると、運転席の後ろにある仮眠スペースに毛布を持ち込むと、窓ガラスをカーテンで閉めてそのまま仮眠を取ることにした。






 同時刻、遊牧民ノマドの集落で族長の元に皆が集まって居た。


 霧が出たら動かない、家族は共に固まり、

決して離れてはイケナイ。


 昔から言われている遊牧民ノマドの掟だ。


 族長が1人の少女を呼んだ、いつもロックと鳩を狩っていたあの少女だ。


「あの男に…あれは渡したかの?」


 それを聞いて少女が頷く。


「言われた通り…渡しました」


 それを聞いて族長は満足そうに頷く。


「あの男に…創造神様の御加護を…」


 そして族長が祈ると、周りの人達も祈り出した。



 ロックは仮眠を取る前に、首から下げた認識表ドッグタグに付いている、赤い血のような色の石を見ていた。


 遊牧民ノマドの少女が族長からのお礼だと渡された石。


「お守りなの…通訳の魔石って呼ばれてるけど」


 役に立った事は無いらしい。


 苦笑しながら、ロックはその石を自分の認識表ドックダグに付けた。


 少女がその後言った言葉を思い出す。


「私達が元々居た場所ってね…孤島アイランドって呼ばれてたんだって」


 ロックがそれを聴いて。


孤島アイランド?」


 そう言うと少女は満足そうな顔で。


「そう!…孤島アイランド、水が豊かで、山も森もある島」


 そして少女は空を見ながら。


「そこからは…月が2つ見えたんだってさ!」


 ロックはそれを聴いて思わず。


「月が2つ見える?」


 そう聴くと、少女はコクリと頷いて。


「そうなの…青い月と赤い月」


 2つの月の見える島、孤島アイランド


孤島(アイランド)…私達の故郷(ふるさと)




 そこまで思い出しながら、ロックは眠りに付いた。



 そしてロックが寝ている時、胸の石が赤く輝いていた事をロックが気がつく事は無かった。



 ゲートから出た霧はやがてゲートの中へ、中へと収束して行く。


 そしてゲートの中で眠りに付いているロックと共に…



 やがて……消えて行った。








同時刻…ワイルドグース…北ブロック補給管理センター




「反応が消えた!?…反政府軍ゲリラか?」



メリンダがそう聴くとモニターを見ていた管制官が。


「わかりません…突然反応が消えてから、それ以降は無線にも出ません」



 その後、衛星電話にも反応し無いと報告が入り、メリンダは救難ヘリの要請を出した。


 しかしロックと輸送トラックは、跡形も無く消えていた。



 そう…まるで…蜃気楼の様に。





 同時刻、遊牧民ノマドの集落。



 霧が晴れると村の男達が、武器を手に周りを警戒する。



 そう…それはまさしく、侵入者を捜索する様に。


 それが終わると、族長の元に報告が入った。



 侵入者無し……………それを聴いて族長は1人呟いた。



「今回は連れて行く方か…迷い人に幸あらん事を」



 そう言うと族長は神に祈りを捧げた。



彼らが敬う…創造神に




 ロックは、仮眠から覚めると違和感に包まれた。


 昼間から仮眠して数時間後、まだ日は高い筈なのにカーテンを引くとそこは、真っ暗な闇。


 そして、その中にポツンとトラックが佇んでいる。


 車のライトを付けると、石畳の向こうに植物が見えた。


「砂漠に植物?」


 ロックは車のドアを開けると外に出て、そっと扉を閉めた。


 砂漠の静寂では無く、虫の鳴く声と風で揺れる草木の音。


 そしてむせる様な植物の匂い!



「砂漠じゃ無い?…」


 その時、雲が晴れて空が見えた。


 満天の星空に煌々(こうこう)と輝く星々と2つの月が輝いていた。


 赤と青の…2つの月が。



「嘘だろ!……おい!」



ロックは現実に打ちのめされながらそれを見ていた。



赤い月と青い月。



 その時、遊牧民ノマドの少女の言葉が頭の中に蘇る。



 2つの月のある故郷、孤島アイランド



私達の………故郷ふるさと

次回からは新章


孤島アイランド編が始まります

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