80年前 ドイツ
異世界開拓地物語 帝国編
スタートします
80年前、ドイツは第三帝国を名乗り、世界を相手に戦争ていた。
ドイツの東にある工業地帯に住む、国民突撃隊の少年兵ラインハルトも、その余波を受けて戦車の製造工場で働く日々を過ごして居た。
「君に会いたいと言う人が来ている」
工場長に呼ばれると、そこには国民突撃隊では珍しい若い兵士が待って居た。
透き通る様な白い肌と青い目の兵士はラインハルトの方を見ると、皮の軍用鞄から1通の封書を取り出した。
「命令書だ」
そう言って←(※)封書を手渡す。
「ヒトラー総統閣下の通達により、君には船で外国へ行ってもらう」
兵士の説明によると、ラインハルト以外にも選ばれた少年兵がおり、皆で南米を目指すという。
「明日の朝、家に迎えを寄越すので本日は帰って準備をすること」
兵士にそう言われて工場地区に程高い住宅地、赤いレンガと煙突が並ぶ我が家に帰ると、家の前で遊んで居た妹に手を振る。
「お帰りなさい! お兄ちゃん!」
今年10歳になる妹のヒルダが満面の笑みで迎えてくれたのだが、夕食の席で南米行きの話をすると、その顔が驚愕に変わる。
「お兄ちゃん、遠くに行っちゃうの……」
目に涙を溜めて兄を見つめるヒルダ。
ラインラントはそんな妹の頭を撫でる。
「帰って来るから、いい子にしてるんだよ」
久しぶりに妹と同じベッドで寝た翌朝、荷造りを済ませたラインラントは家の前のベンチで妹と2人座って迎えを待つ。
束の間に妹との別れを惜しむと、やがて迎えのトラックが目に入って来た。
下から見上げる妹を優しく抱きしめる。
「必ず帰るから! 元気でね……」
そう言うと幌を被った荷台に鞄と共に乗り込んだ。
大好きな兄の姿を、ヒルダは見えなくなってもそのまま見送っていた。
1ヶ月後、少年兵達を乗せた貨物船はドイツの港を出港した。
船酔いと戦いながら船は進路を南に向かう。
船酔いにも慣れた頃ある夜の航海中、船は霧に包まれた。
そのまま微速で航海していると、突然衝撃音と共に船足が止まる!
船室で寝ていたラインラントもベッドから放り出され、船は斜めに傾いたままピクリとも動かない!
「何が起きたんだ? 座礁か?」
慌てて甲板に出ると、他にも人影が見える。
その時に誰かが叫んだ!
「月が! 2つある!」
ラインラントが空を見上げると、そこには青い月と赤い月がハッキリと見えた!
2つの月明かりが周りの景色を浮かび上がらせる。
水では無く砂、砂の海が何処までも広がる砂漠地帯、そこに船は斜めに傾いた状態で静止していた。
「何なんだよ……ここはいったい?」
その問いに答える事の出来る者は、誰も居ない。
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そして80年後のネットカフェにて、この物語は新たな局面を迎える。
国民突撃隊とは? スターリングラードの敗戦により兵力不足になったドイツが、16歳から老人までの民間人に武装させて予備兵力として徴用しました。