ep.91「一人でも」
「……すまない。もう、僕の手ではどうにも……」
パズルさんが、オーロさんの遺体に触れながら言った。
悲しいが、わかっていたことだ。視線をオーロさんに向けたまま立ち上がる。
「いえ、大丈夫です。……せめて、地球で埋葬を」
「わかった。少し不謹慎かもしれないが、僕がパズルにして持っておくよ」
パズルさんが、オーロさんをパズルのピースに変える。
二つに分けられた遺体を、懐にしまった。
「一人で行動するのは危険だ。私たちと一緒に来るか? 永宮君」
「いえ。班長を助けに行きます」
「なっ?!」
ポルトロンさんに肩を掴まれる。
ガクガクと体を揺らされながら、怒気が篭った声を放つ。
「テュエマタールは、族長と戦っているんだぞ?! 酷いことを言うが、君が行ったところでどうにも――」
「それでも、です。もう……仲間の遺体を見るのは……」
英史やプフェーアトさん、水樹さんは上手いこと生き残っているだろう。あの人達のことだ、絶対に生きていると確信できる。
しかし、班長はあのルマルと戦っている。どっちが生きて、死ぬかわからない。もしかしたら、相打ちになって死にかけているかもしれない。
その場合、誰かが助けなければ班長は死ぬ。
「ポルトロン。永宮君は強い。大丈夫だよ」
「……それは、そうだが……」
パズルさんが懐からいくつかピースを取り出し、慣れた手つきで組み立てはじめた。
包帯や鎮痛剤など、俺がロジーに渡してしまったものが全て現れる。
重厚な見た目をした赤いバイクも目の前に出現し、キーを渡される。
「それで行ったほうが早い。それと……」
パズルさんに体を触られる。
全身の火傷が全てピースになって消え、体が一気に軽くなる。
溶けた左足にも義足を付けられ、体が元の状態に戻る。
「大声で宣言してたでしょ? 全員死なないって。もう全員は無理だけど、一人でも多くするんだ。行って来な!」
バイクにまたがり、エンジンを動かす。
アクセルを勢いよく捻り、とんでもないスピードが出ることに驚きながら、前を睨む。
目指すは、ルマル自身が居るといっていた荒野。
ポケットにしまった包帯等を確認しながら、バイクを走らせた。
改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。