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ep.87「仏頂面」

「ああクソッ! なんでだよ!」


 悪態を吐きながら、腰に差した鞘を地面に投げる。

 手に持った剣を磁力で引っ張り、勢いを必死に弱める。

 地面に転がりながら着地し、元の方向に向かって走り始めた。


「二人でやっと勝てる相手なんだろ?! なんで俺を投げたんだよ!」


 地面に刺さった鞘を回収しながら、マグマの湖を飛び越える。

 溶岩を飛び越えたときに少しだけ足が焦げるが、気にしている余裕はない。

 気合を入れて再び走り出そうとするが、内臓がいくつか潰れているダメージが今になって戻ってくる。

 数歩ヨロヨロと歩いてから、その場に倒れこんでしまった。


「ハァ……オーロさん……」


 手を伸ばして、近くの出っ張りを掴む。

 高温の地面の上を這いながら、前に進む。

 

「……大丈夫か?」


 目の前に、血のついた大きな手が現れる。

 視線を上に上げると、眉間にしわを寄せた不機嫌そうな表情を浮かべている男性がいた。


「ポルトロンさん……!」

「大丈夫……ではなさそうだな。少し待て」


 立ち上がってどこかに行こうとするポルトロンさんのズボンの裾を掴む。

 不思議そうな顔を向けてくるポルトロンさんに、喉から搾り出すような声で言った。


「オーロさんが……向こうに……!」

「なるほど。わかった」


 震える手を必死に上に上げて、オーロさんがいる方向を指差す。

 眉間にしわを更に深く刻み込んでから、納得したように頷き、襟についた無線機に何かを話しかける。


「行くぞ」


 体を肩にかつがれ、ポルトロンさんが走り出す。

 重機関車のような安定した走り方で、上半身が全く揺れていない。

 後方に向かって流れていく景色を眺めながら、懐の中を探る。


 ああ、クソッ。鎮痛剤だけは渡さずに持っておけばよかった。

 胸を手で押さえながら、体中に走る鈍痛を堪える。


「戦えそうにないなら、無理しなくていい」

「いえ、戦えます…!」

「そうか。……一応あいつを呼んでおいたが、間に合わないかもしれない。覚悟はしておくんだ」



 ポルトロンさんがそう言った瞬間、足を止める。

 人型の溶岩、フラムがこちらを向いて立っている。


「……てめぇ、逃げたかと思ったぜ。仲間でも呼びに行ってたようだが、少し遅かったな」


 フラムが右腕を真上に突き上げる。

 その腕に、空から降ってきた、全身が焼け焦げた黒い何かが音も立てずに突き刺さった。

 人体のような形をした黒いそれは、両腕が二つともなく、ズルズルと地面に滑り落ちる。


「なっ……!」


 顔の部分が奇跡的に焦げておらず、誰か判別できた。できてしまった。

 


「フラムゥゥゥウウウウ! てめえぇぇぇえええ!」


 首の血管がはちきれんばかりの大声で叫ぶ。

 ポルトロンさんの体から飛び降り、剣を鞘から取り出しながら駆ける。

 目を閉じたまま、先が炭化している煙草を咥えたオーロさんの上を飛び越え、フラムに斬りかかった。

 


 

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