ep.81「アレスドゥエル星」
宇宙船から一歩出て、地面を踏みしめる。
ここらあたりは、草原が続く地帯だ。ホログラフィックを頼りにすると、ここから東が雪原、北が荒野、西が火山になっている。
「……やっぱり、バレてるヒン」
「そりゃそうだね~。ま、結局戦うことになるんだし、あんまり変わらないんだね~」
プフェーアトさんとオーロさんが周りを見回しながら言った。
確かに、あたりからチラホラと見られている感覚がする。しかし、どれも気に留めるほどの強さの雰囲気を漂わせていない。無視して大丈夫だろう。
『……こんにちは。侵略隊の皆さん』
突如、上空に巨大なスクリーンが浮かび上がる。
音声つきの豪華なそれには、赤い服にドクロの首飾りをかけたルマルが映っていた。ロジーも共に映っていて、その他にもたくさんの見知らぬヒュイド族が映っている。
『長い話は嫌いです、短く纏めましょう。私はそこから北に行った荒野の山頂で、あなたたちを待っています。では……』
話を短くまとめたルマルがスクリーンの中から消え、スクリーンが影も形も存在しなかったように跡形もなく、プツンと消滅する。
それと同時に、先ほどから感じていた視線の気配も消えた。
「……第三チーム、最後の確認だ」
宇宙船の中からスクリーンを眺めていた班長が、船から降りてきて言った。
いつものようなほわほわとした優しい表情ではない、とても険しい表情を顔に浮かべている。
握った右の拳を前に出しながら、確認するように言葉を紡いだ。
「各々、出会ったヒュイド族は確実に殺すこと。そして……僕の助けには来ないこと」
「え?!」
口から驚きの声が出る。
例え班長が規格外の強さでも、ルマルと一対一では危険が多すぎる。
異論を唱えようとすると、言葉を遮るように班長が口を開いた。
「……はっきり言うよ。族長と戦うのに、君たちは正直言って足を引っ張るだけだ。それなら、僕一人のほうがいい」
声を少しだけ震わせながらそう言った。
班長は嘘を吐くとき、必ず声を少しだけ震わせる。だから、この言葉もきっと嘘なんだろう。
言葉の裏に隠された本当の意図はわからないが、きっと何も言わないほうがいい。班長なりに考えた嘘だ。
開きかけた口を一度閉じ、少し悩んでから、再度口を開いた。
「わかりました。絶対、無事で帰ってきてください」
「班長……帰ったら酒でも飲むわよ、パーッと!」
「そうだヒン! また予算をくすねて酒を買うヒン!」
「プフェーアト、それをやると俺たちまで絞られるんだね~……」
「まぁ、僕も酒は飲めないことはない……あの子探しのついでに、今度は楽しむよ」
第三チームの全員が、励ましの言葉を言いながら右手を出す。
班長の握り締めた拳の上に、全員がそっと手を乗せた。
「第三チーム、全員絶対に死ぬんじゃないぞ! よし、解散!」
班長の言葉と共に、大きく雄たけびをあげながら手を上にあげた。
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