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ep.77「アイドル護衛」

「みんなー! こ・ん・に・ちワーン!」

『ワンワンワワーン! ワァンワォンワォオオオオン!』

「うるさいですよ! パズルさん!」


 無線から響く叫び声に、思わず耳の穴を塞いでしまう。

 ただでさえフロアに満杯に詰まった人々が叫んでうるさいのに、耳元でも叫ばれてはたまったものではない。

 白いスポットライトを浴びながら、綺麗な歌声を出しながら踊っているアイドルの方を眺める。


『さん付けはやめ……まあいいか。いやーごめんね。ワンワン子が活動し始めた頃からのファンだから、こんな大きな舞台で踊っているのが嬉しくて……』

「聞くたびに思うんですけど、人気が出なかったのはその名前のせいじゃないですか」


 ワンワン子は、最近人気が沸騰し始めたアイドルだ。

 真面目そうな正確と見た目、何よりダンスのキレとその美声が注目を浴びている理由らしい。何年も光の目を見ない地下でコツコツと下積みを積んで、ファンの一人ひとりに優しく接していたのも熱狂的な人気の一つだとか。


 正直言って、名前がクソダサいのと、グループで活動していないのが人気が出なかった理由だろう。現に、遠くから眺めているだけでも見惚れてしまいそうな魅力を持っている。


『ワンワン子、いい名前だと思うだけどなぁ……そっちに異常はない?』

「今のところありませんよ。しかし、こんな広いステージを二人で護衛って、中々辛いものですね」


 無線に手を当てながら、あたりを見回す。

 特に今のところ、不審な人物は見当たらない。……いや、パズルさんが一番の不審人物だ。向かい側のライトアップ専用通路で、緑色のペンライトを両手に持ちながら狂喜乱舞している。


「けど、なんで俺を護衛の仕事に誘ったんですか? お金に困ってたのは事実ですが……」

 

 そう。モルテ恒星が爆発したときの金を集めたはいいものの、売るときにプフェーアトさんが少し失敗して、一千万ほど借金が残ってしまったのだ。何で金を踏んづけて価値を下げてしまうのか……。

 残りの一千万を返す手段を悩んでいたとき、パズルさんが会議室にいきなり入って来て、超人気アイドルワンワン子の護衛の仕事を誘ってきたのだ。しかも俺のことを指名して。

 

『仲を深めたいってことや強さを確認したいってこともあったけど、一番は僕と同じ匂いがしたからかな』

「同じ匂い?」

『君、えっちな本とか読むとき心の中でふむふむ言ってるでしょ』


 パズルさんの言葉に、気道に唾を詰まらせる。

 ゲホゲホとむせていると、無線機の向こうから嬉しそうな笑い声が聞こえる。


『あははは。その反応、やっぱり僕と同じだね。えっちな本を読むとき、ついふむふむしちゃうよね』

「そんな動詞みたいに言われても……」


 胸を右手で叩きながら、通路の柵にもたれかかる。

 一曲目が終わり、フロア中から拍手の音が響き渡る。


「っていっても、こんな大きいフロアで護衛なんて要りますか? ファンを抑えるだけなら、強面のボディガードを雇えばいいんじゃ……」

『ワンワンワーン! ……それがね、どうもピース団が関わってるらしいんだよ。団長が死んだってのに、頑張るよね』


 ピース団。

 あの変な集団が関わってるのか。団長は観葉植物の肥料になったのに、まだ熱心に活動しているらしい。

 溜息を吐きながら、無線機を口元に近づけて話す。


「ピース団が関わってるって言いましたけど、なんでまた?」

『アホらしい理由だけどね。アイドルは人々の正気を失わせ、暴力活動を推進する活動だから辞めろって言ってるらしいよ。まったく、殺したいよね』


 アホすぎる内容で、呆れを通り越して笑いがこみ上げる。

 腹を抱えて頭を下げた瞬間、ペンライトの類ではない、眩しい反射光が目に付く。

 とんでもなく長いスナイパーライフルを構えた黒ずくめの男が、いつのまにかアイドルの向かい側の高台に侵入していた。


「あ、ちょっと行ってきます」

『わかった。いやー、サビの盛り上がりの凄さは新人時代より凄くなってるなー。ワンワンワォ――』


 無線機の電源を切り、柵に足をかける。

 腰の剣を右手で抜き、銃を構えた男の方に向かってジャンプする。

 ペンライトを振っているファンの頭上を飛び越え、男の銃の先を真上にへし折る。


「ピース団って、本当にロクなことしないな……」


 光り輝くレーザーが天井に向かって発砲され、天井の一部が焼け焦げる。

 男の頭を踏みつけながらレーザー銃を奪い取り、曲がった砲身を元の向きに無理やり戻す。

 暴れる男の四肢を剣で切り裂き、股間を銃で撃ち抜いた。

 暗闇の中でもわかるほど大きく体を痙攣させ、白い泡を吹きながら気絶した。


「終わりました。呆気ないですね、これで一千万ですか……」

『お疲れ様。あとは裏方の仕事をして終わ――』


 バン、と音を立てながら会場の照明が消える。

 ざわざわと騒ぐファンの声をかき消すような、鋭い女性の悲鳴が響き渡る。先ほどまでずっと耳に歌声が入っていた、ワンワン子の声だ。


『永宮君!』

「わかってます!」


 男の体を蹴り飛ばし、ファンの一人からペンライトを奪う。

 腰の鞘を思い切りワンワン子が歌っていたステージの方に放り投げ、剣の磁力を生かしながら超加速で突っ込んだ。



 

ストーリがあんまり進んでない気がします。

改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。

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