ep.71「えっちな本」
「あ~……」
体をほぐしながら、第三チームの部屋に入る。
シエルイル星から帰って一週間も入院し、初めて来るのだ。喉の調子を確かめながら、大きく息を吸った。
「おはようございま……あれ?」
靴を脱いで部屋の中を見回すが、珍しく今日は誰もいない。
机の上には、大量の本が乱雑に置かれている。
付箋が貼っているものがほとんどなので、恐らく英史の私物だろう。渋々と散らばった本を一つにまとめようとしたとき、一番下の本が目についた。
「……これは」
ピンク色の表紙に、生々しい単語がいくつも書かれたタイトル。
誰がどう見ても、えっちな本だ。
扉が閉まっているのを確認し、部屋の隅に座って本の一ページ目を開く。
「ちょっと永宮クン!」
「うべばぁっ!」
机の上の大きな本を一冊取り、えっちな本の上に被せる。
扉の方にいる水樹さんからは、表紙は見えていないはずだ。背後の壁にも鏡などはないので、完璧だ。
「……永宮クン、ファッション誌なんか読むの?」
「いやまぁ、少しぐらい身なりに気を使おうかと」
そう言いながら、えっちな本に目を落とす。
ふむふむ。男性の家に女性が転がり込むというシチューエーションらしい。女性のほうは高身長で褐色肌という、中々にニッチな属性だ。
「私の家に転がり込んできた、フールってのがいるじゃない?」
「ああ、あいつですか。元気ですか?」
「元気だけど、最近様子がおかしいのよね。私のお父さんと妙に距離が近いのよ」
「へぇー」
気の抜けた返事をしながら、次のページを捲る。
ふむふむ。ラッキースケベが多発してお互い意識し始めるという、いい感じの展開だ。妙に距離が近くなっていくのも、安定の王道だな。
「なーんか、胸を触らせてたり、酷いときには抱き合ってたのよ」
「へぇー。ラッキースケベですかね?」
「怪しいわよねー……」
次のページを捲る。
お互いが顔を赤らめながら、抱き合っている。
……。
「抱き合ってるとき、顔赤くしてました? 二人とも」
「ああ、してたわね。なんで?」
「いえ、ちょっと」
ページを捲る。
お姫様抱っこでベッドに直行し、言葉にするのも恐ろしいほどの濡れ場が始まった。ページを適当に捲るが、そこから先はずっと濡れ場が続いている。
うわっ……これすごい。
「私、どうしたらいいかしら?」
「とりあえず監視カメラでもつけて様子見しましょう。よかったら録画データ、代わりに俺が見ますよ」
「そうねぇ。……ちょっと、鼻血出てるわよ。はいティッシュ」
ティッシュの箱を受け取る。
ティッシュをグシャグシャと潰して固めてから、両方の鼻の穴に突き刺した。
楽しみだ。
危ない
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