ep.5「ヒュイド族」
空に舞う六つの剣。
意思を持っているように飛び回っていたが、突然回転し始める。
「ボーッとしてたら撃たれるよ!」
足を払われる。
地面に倒れながら、頭のあった場所に銃弾が通過するのを眺める。
鞘から剣を抜きつつ、体制を立て直す。
再度、宙に浮かぶ剣を見る。
低い独特の、空気を切る音が城の内部に響き渡る。その音が、剣の加速につれて高くなっていく。
「あの剣、絶対永宮君には当たらないから安心していいよ」
そう言い残し、班長は消えた。
正確には、動きが速すぎて目に捉えることができない。
六つの剣が、スライムの群れに突っ込む。
切り刻まれたスライムは、ミキサーにかけたようなジェル状になっている。
「いや、この中に突っ込むのは流石に無理…」
次々と、ジェルのような物が産み出されていく光景を眺める。
ときどきスライムが空中に打ち上がる。
多分、班長がスライムを打ち上げているんだろう。
空中で身動きもできず、飛んできた剣に切り刻まれている。
なんというか、あそこまで行くとかわいそうだ。
「班長、盛り上がってるわね。大丈夫?」
振り返ると、黒いお盆を持った水樹さんが立っていた。
「大丈夫です。班長のアレ、凄いですね」
空中に浮かぶ剣を指差す。
「ああ、私製の磁力とか何とか利用したスーパーソードね。といってもあんな失敗作、班長以外使いこなせないけどね」
「そんなことはどうでもいいのよ」
と言った水樹さんは、左手で奥の方にある階段を指差した。
「プフェーアトとオーロは城の外からジャンプして上の方に行ったけど、流石に私はそんなことできないのよ。気になる物も見つけたし、一人じゃ危険だわ」
そう言うと、一枚の布をポケットから取り出した。
黒い布に、白色で人間の手を模した絵が描かれている。
白い手には、人間のヒビが入った頭蓋骨が握られている。
「何ですか? それ」
水樹さんは、黒い布を握り締めた。
「私達、人間ととても似た容姿を持つヒュイド族って奴らのマークよ。過去に一族全員を根絶やしにしたはずなんだけどね…。まだ生きてたみたいだわ」