ep.65「戦闘員」
ダイヤモンドダスト、というのだろうか。キラキラと光る白い煙が視界を遮ってくる。
目にも入り邪魔なことこの上ない。
「お主、寒そうな格好をしてるでござる。寒くないのでござるか?」
背後からポウニンの声が聞こえてくる。
振り返りながら、遠心力を生かして右手の剣を振り払う。
金属同士がぶつかりあう甲高い音が鳴った。
「寒いに決まってんだろ……!」
「そんなに怒らないで欲しいでござるよ。湯たんぽ使うでござるか?」
右足でポウニンの体を蹴ろうとした瞬間、素早い動きで避けられる。すぐ後ろに生えていた太い木を蹴ってしまい、足が軽く痺れる。
ご丁寧に、地面に熱湯が入った湯たんぽが布に包まれて置かれている。
「親切にどうもありがとうよ!」
少しいやみったらしく言い放ち、湯たんぽを拾う。
手と足を十分に暖めてから、服の中に入れる。暖かい。
「ちゃぷちゃぷ音がして可愛いでござるよ。そのままアイドルでも目指したらどうでござるか?」
「うるさい!」
ポウニンの声がしたほうに、剣を思い切り投げる。
飛び膝蹴りを決めようと飛び上がったが、頭から地面に叩き落とされる。
剣を持っている右手を強く踏まれる。
「さすがに、三対一でやっとロジーと互角の人間には負けないでござるよ。これでも一応戦闘員でござる」
手がピキピキと音を立てながら凍り始める。
皮膚が全て捲れ上がるような痛みと共に、手の感覚が徐々に消えていく。
「グガッ……! 戦闘員だって?!」
「そうでござるよ」
左手で無理やり体を起こし、ポウニンの頭を蹴り上げる。
今度は避けられずに当てることができたが、全く効いている様子がない。
右手で足を掴まれ、そのまま木に叩きつけられる。
「お主は正直言って雑魚でござるよ。今まで運だけで生きてきたようなものでござる」
右足が徐々に凍り始める。
左手で剣を握り、ポウニンの頭に向かって逆袈裟斬りをしかけた。
しかし、あっさりと摘むように止められてしまう。
今度は地面に叩きつけられ、凍った右手が砕け散った。
「拙者が引導をわた…… チッ、運がいいでござるな」
瞬間、ポウニンが手を放し、姿を消した。
周りの木が一斉に倒れ、向こう側からプフェーアトさんが走ってくる。
「永宮! 大丈夫ヒン?」
プフェーアトさんの肩を借りながら身を起こし、砕け散った右手を見る。
左手で剣を握りなおし、自分を励ますように足を強く、強く叩いた。
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